全国7工場で12国籍。多様な従業員が働く製造部門のDX化を推進
課題
- 製造部門では労務手続きの大部分が紙だった
- 労務担当者の負担が重く改善が必要だった
解決策
- 全社的なDX推進を追い風に、人事労務の電子化に着手
効果
- 16,000枚の紙の書類を削減
- 年間400万円、担当者の業務時間換算で2,000時間の削減
- パートナーさんと「直接つながる」ことができた
フジッコ株式会社は、兵庫県神戸市に本社を置く大手食品メーカーです。同社では全社的なDX推進を背景に、人事・労務分野でのデジタル化に着手。SmartHRの導入により全国に7工場をもつ製造部門でのペーパーレス化が進行しています。
導入に至るまでの過程や導入後の変化について、人事総務部・堀井さん、東京工場総務課・高橋さんにお話を伺いました。
多様な国籍をもつ従業員にも対応可能な機能群が決め手
SmartHR導入以前に抱えていた課題を教えてください。
堀井さん:これまで本社や営業部門では、SmartHRの導入以前より使用している基幹システムを通じて人事・労務手続きや給与明細の配布をしてきました。
一方、パートナーさんと呼んでいる非正規雇用の従業員が多く在籍する製造部門では、雇用契約・入社手続き・契約更新・身上異動など、人事・労務手続きの多くが紙による運用でした。
そのため、製造部門の労務担当者の負担が大きかっただけでなく、パートナーさんの労務手続きの利便性向上も課題になっていました。
導入のきっかけは何でしたか?
高橋さん:私が鳥取の工場から東京の工場へ転勤したことに伴い、管理する従業員数が120人から500人ほどに変化したことがきっかけです。
日々パートナーさんの入退社が発生するなか、給与改定の時期ともなると500人分の労働契約書の更新と案内・配布・回収を私を含めた3名体制で対応せざるを得ませんでした。
全社的なDX推進の流れも追い風に、この時からシステム導入に向けて積極的に情報収集を開始しました。人事・労務系のベンダーが出展する展示会へ参加するなかでSmartHRに関心をもち、導入を推進しました。
システム選定時はどんな点を重視されましたか?
高橋さん:従業員数が多いことから、入退社手続き・雇用契約をいかに効率化できるかを重視しました。また業務上、従業員の年齢層や男女比、定着率といった数値が必要になる機会が多いため、システム上で直接、蓄積したデータの中から数値の集計や分析ができる機能を求めていました。
導入の決め手はなんでしたか?
高橋さん:何より、SmartHRは雇用契約をスムーズに締結できる点が決め手でした。製造部門で働くパートナーさんは、国籍の数でいうと12カ国ほど、実に多様な国籍の方が働いています。その点でSmartHRの多言語化対応の精度の高さは強みでしたし、誰でも直感的に利用できるUI/UX(ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンス)は魅力的でした。
年齢の高い従業員からの嬉しい反響が定着を後押し
導入時の状況について教えてください。
堀井さん:昨年(2021年)4月からの本格稼働を見据えて、2月から一気に準備を進めました。実際、3月下旬には4月異動分の申請を受け付ける必要があったため、それまでに全従業員の情報入力と利用開始に関する案内を展開するなど、かなり短期間で進めたんです。
また私自身、SmartHRの導入担当になったのは異動後1年に満たない段階で、実務を通じて労務を学んでいる状況でした。そんな状況でも「困ったらカスタマーサクセスの担当者さんがいる」という安心感にも支えられて、大きくつまずくことなく導入できました。
多様な従業員さんが在籍されているなか、どのように導入を進められましたか?
堀井さん:社内展開用に提供いただいたスライド資料を活用しました。自社向けにアレンジしやすい書式になっていたので、年末調整の繁忙期でもサッと資料を用意できたので助かりましたね。英語版の資料も活用させていただきました。
工場によってはデジタルデータで共有できない環境もあるのですが、その際はスライド資料を印刷し、掲示板に貼って周知を図りました。
従業員の方々からは、どのような反応がありましたか?
堀井さん:とくに嬉しかったのが、比較的年齢の高い従業員からの反響です。「SmartHRいいね」「僕にもできたよ」という声を数多くもらえたのが、本当に嬉しくて。
パートナーさんの中には、デジタルにあまり慣れていないアナログ派の方々もいらっしゃったと思います。そんな状況を理解したうえで、SmartHR導入によるデジタル化の流れを止めないために、意図的に後押ししてくれたのではないかと思うんです。担当者としては勇気づけられましたね。
高橋さん:アナログ派の方は、従業員の方々だけではありません。労務担当者の中にもデジタルツールに不慣れな方はいらっしゃいます。
ちょうど先日、そんな担当者2名が私のところへ来ました。以前から取り組んでいた、オンラインでの雇用契約の締結です。「無事に合意ができました!」といいながらスマートフォンの画面を見せてくれたんです。「やったね、おめでとう!」と声をかけ、思わず拍手して喜び合った一幕がありました。
デジタルへの慣れ・不慣れは人によって異なりますが、一人ひとりが「本当にできるんだ」と小さな成功体験をもてることが大切だと学びましたね。
各工場のリソース状況が見える化。従業員と直接つながることによる効率化も実感
SmartHR導入後の変化について教えてください。
堀井さん:導入初年度の実績として、16,000枚の紙の書類を削減できました。費用でいえば400万円削減、担当者の業務時間換算で2,000時間分(=人数換算で約1人分)の削減となりました。
雇用形態を問わず、全従業員分の年末調整をSmartHRで実施できたのが削減効果を生んだ要因だと考えています。
高橋さん:実際、年末調整については従業員からの反響も大きく、来年度のために今年記入した書類を写真で撮ったりコピーして保管していたものが不要になったと喜ばれています。
来年は入力済みの内容が保存されるため、変更点のない基本情報の再入力の手間が省ける点など、わかりやすくメリットを感じてもらえています。
堀井さん:現在進行中の導入2年目の見込みとしては、さらに1,400万円削減、担当者の業務時間にして7,200時間分(=人数換算で約3.5人)の削減効果を見込んでいます。
当初、想定していなかった効果や社内での変化があれば教えてください。
堀井さん:各工場でSmartHRを用いた電子化の進捗状況が見える化されたことにより、人事・労務業務における人手が不足している工場と充足している工場が明確になったのは大きな変化です。
人手が不足している工場に一定以上の理解や操作を求めるのは困難ですし、一方で充足している工場では、必要以上にSmartHR上での情報管理やメンテナンスをしていることもわかりました。組織構造上、適切なリソース配分と体制の見直しを今後の課題として経営層へ提案するなど動き出しています。
また、SmartHRの導入によって、パートナーさんたちと初めて「直接つながる」ことができたのも大きな変化だと感じています。
社内のイントラネットは基本的に正社員向けになっており、工場勤務のパートナーさんにコンタクトをとる場合は、工場を担当する総務を経由する必要があったんです。
現在は、SmartHR上で直接やりとりができるため、工場ごとに実施していた業務を集約するなど業務の平準化につながりました。
従業員サーベイ機能もうまく活用されていると伺いました。
堀井さん:はい。SmartHRで実施した年末調整の感想を聞くためのユーザーアンケートを行いました。SmartHR上の従業員情報と紐付けられるため、回答者があらためて氏名や部署名を入力する必要がないのがいいですね。匿名かのような手軽さで実施できる点が担当者、従業員双方にとってありがたいです。
実際、過去に別のサービスで実施した匿名式のサーベイよりも回答率がよく、回答スピードも早いという結果が出ています。
また、以前に利用していたサービスでは、どこかにQRコードを提示して従業員がアクセスできるようにしないといけないのですが、それだとパートナーさんによってはハードルを高く感じられてしまうこともありました。SmartHRでは、各自のマイページに従業員サーベイの案内が届くため漏れずに回答してもらいやすいのがメリットですね。
今後は活用範囲を広げ、従業員サーベイを使用して集めたパートナーさんからの意見をもとに、健康経営につながる取り組みを推進していく予定です。
従業員一人ひとりがさらに働きやすい環境へ
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
高橋さん:各拠点での困りごとや改善に向けた提案が、まだ狭い範囲内で収まってしまっているように感じます。そこで留まってしまってはもったいないので、部署や拠点の枠組みを超えて、全社的な意見交換がさらに活性化するような環境づくりに取り組んでいきたいと思っています。
堀井さん:これまで同様に部署を横断したデジタル化の推進を継続しつつ、今後はより従業員一人ひとりに向き合って、各々が働きやすい環境づくりに力を入れていきたいと思っています。ダイバーシティを尊重して、誰でも安心して働ける会社づくりに貢献していきたいですね。
引き続きSmartHRがご支援できるよう改善を進めてまいります。本日は貴重なお話をありがとうございました!
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掲載内容は取材当時のものです。