伝統企業が取り組んだ「データの民主化」 データで現場を支え、人的資本経営の実現へ
課題
- 従業員データが分析可能な状態になっていなかったこと
- 事業部や店舗により情報の格差が生じていたこと
解決策
- SmartHRを導入し、従業員データを蓄積できる環境に
- 蓄積したデータを2次活用するために、分析レポートを活用
- 現場に必要なデータを精査し、定期的に配信できる仕組みを構築
効果
- 採用に向けて、定量データをもとにした議論が可能に
- 施策の立案や実施スピードが速くなった
- 数字で考えることが習慣化されるため、次世代社員の教育にも効果
株式会社晃商は、パチンコホール「スーパードーム」や「焼肉の名門 天壇」など32拠点を運営する企業です。1947年の創業以来、京都府を地盤として事業を展開し、近年では水耕栽培の野菜工場やスーパー銭湯など、新しい分野にも事業を広げています。
2022年に人事労務領域の課題解決にSmartHRを導入し、業務を効率化。そして、人的資本経営の実現に向け「現状を定量把握できる仕組み」を整えるために、2023年に分析レポート機能の活用も開始しました。
今回は、人事部 給与労務課の岡部さんと、スーパードーム舞鶴店 店長の立部さん、天壇桂五条店 支配人の朝山さんの3名に、人事と店舗、それぞれどのようにSmartHRを活用しているのか、導入背景やその後の変化についてお話を伺いました。
公正公平にデータを届け、拠点間の情報格差をなくしたかった
SmartHR導入以前に抱えていた課題を教えてください。
岡部さん:経済産業省が公開している「人材版伊藤レポート」にもあるように、変化の激しい現代において持続的に企業価値を向上させていくためには、人的資本経営の実現が不可欠です。
そのために必要なのは、目指すべき姿と現在とのギャップを定量的に把握することだと考えます。たとえば何かの施策を実施するにも、事業部全体の平均値と各店舗の数値を把握できてこそ、取り組むべき課題が見えますよね。
そのような背景から、以前より「従業員の状況をデータで効率的に把握できる仕組みを整えたい」と考えていました。
従来は従業員データをどのように把握されていましたか?
岡部さん:そもそも把握する手段がなかった、というのが実情です。
たとえば離職率について、「いつ、どの店舗の、誰が退職した」という情報は人事部門にあるのですが、それは書類上の情報でしかなく、集計・分析できるような状態にはなっていませんでした。
日頃から「現状を定量的に把握したい」と考えてはいたものの、日常業務に終われてなかなか改善に向けた動きがとれない状況でした。
店舗ではどのようなご状況でしたか?
立部さん:店長が個人的に表計算ソフトで自店舗の数値を集計・管理していましたが、それ以上のものはなく。
その数値もあくまで自店舗のみのものですから、過去と現在で比較はしたとしても、ほかの店舗や事業部全体との比較をすることはありませんでした。
また、人事労務に関するデータが欲しいと思う度、本社の人事部へ問い合わせてメールで送ってもらうしかありませんでした。
朝山さん:実際に、私は月次で店舗の損益を取りまとめる際に、いつも岡部にメールしてスタッフの給与や労働時間に関するデータをもらっていました。
岡部さん:実は、それこそが課題の1つであり、事業部や店舗により情報の格差があると感じていました。
立部や朝山のように、データに対する感度が高い管理者は自ら情報を集め、データを活用しようとしてくれますが、会社全体で見ると属人的とも言える状況でした。
残業や年休取得など、法令等に従い店舗運営の健全性を高めるためにも、また、将来の発展に向けた施策を考えるうえでも、個々人の情報感度に頼らずどの拠点にも公正公平にデータを届けたいと考えていました。
現場主導で分析レポートを設計、データ活用しやすい環境を整備
岡部さん:SmartHRを選んだ大きな理由は、将来的なデータ活用を見据えていたからです。
人事労務システムの導入を検討した時点で、人的資本経営の実現に向けてデータを蓄積し、2次活用、3次活用していきたいと考えていました。
分析レポート機能の追加を検討した際にも比較検討しましたが、SmartHRにはすでに蓄積されたデータがあり、それをシームレスに活用・表現できるツールとして最適なのはやはり分析レポート機能だろうと、追加契約を決めました。
分析レポートを準備する際に社内ヒアリングを実施されたそうですが、その背景を教えてください。
岡部さん:分析レポートは、役員・事業部長・拠点長・採用チームの4つのレイヤーに共有しています。このうち「拠点長向け」については、準備段階でヒアリングを実施しました。
朝山さん:実際に、岡部からは「現場目線でどういうデータが欲しいか」とヒアリングがあり、レポートのフォーマットについてはいろいろとリクエストさせてもらいました。
朝山さんからは、具体的にどのようなデータをリクエストされたのでしょうか?
朝山さん:フードサービス事業の店舗は、スタッフに占めるパート・アルバイトの比率が90%前後と高いため、店舗として労働資源の安定性や健全性を測れるようにしたいと考えました。
具体的には、スタッフが適正な時間数で勤務しているかを確認するための「契約時の勤務条件と、実際の勤務実績が個人ごとにわかるデータ」、学生のアルバイトスタッフが年収を扶養内に収められるよう「当月までに年間でいくら給与を支払っているかの個人別データ」などです。
リクエストを聞いてもらったおかげで実際に配信される分析レポートは必要な数字が一目でわかるようになっており、非常に便利です。以前ならデータを集めるだけで1日あたり30分くらい費やしていましたが、それがゼロになりました。
立部さん:同じ事業部のなかで自店舗と他店舗を比較したり、好事例を参照したりすることで、自店舗の立ち位置を客観視できるのが非常に大きな効果だと思っています。
また、表計算ソフトで集計・管理していたころと比べると、格段に手間が減りました。表計算ソフトの場合、手動で更新する手間がありますし、更新を忘れてデータの信ぴょう性が低くなってしまうこともざらでした。
SmartHRの分析レポートなら随時最新のデータに更新されますので、新鮮な情報を得られますし、手間もなくなり助かっています。時間としては、手作業での集計・管理に週1時間ほど使っていましたが、ゼロになりました。
私が述べた「週に1時間」、朝山が述べた「1日に30分」という数字は、効果としては小さく聞こえるかもしれません。ですが、日々忙しく回っている現場にとっては、その30分や1時間がとても貴重であり、数字以上に大きな効果が出ていると思っています。
岡部さんは、人事部門としてどのような効果を感じていますか?
岡部さん:まず、拠点間の情報格差をなくす仕組みが作れたことが大きいですね。
弊社では、毎月1日と15日の2回レポートを配信しています。もしSmartHR導入以前にこれをやろうとしたら、手作業で情報をかき集めて集計し、レポートを作り、拠点ごとにメールを出し分けるのに丸1日かかっていたのではないかと思います。
分析レポート機能なら、一度レポートを作成しておけば1クリックで更新、10分程度で配信完了できます。この時間的な削減効果はとても大きいと感じています。
行政報告の作成も非常に楽になりました。たとえば、毎月勤労統計調査も一度レポートを作っておけば、あとは月に1度更新ボタンを押して報告書へ転記するだけで済みます。
また、施策の立案や実施のスピードも速くなりました。たとえば、ミーティングで「アルバイトから正社員への登用は何人いたか」「リファラル採用は何人いたか」といった質問を受けた際に、以前なら持ち帰って調べ、後日報告するしかありませんでした。
分析レポートを使えば、ミーティングのその場で最新データを確認できます。このように、知りたいと思ったデータをすぐに確認できるのが分析レポートの魅力ですね。
データは「現場の成果を出す」ためにあるもの。SmartHRで現場でのデータ活用を推進する
日々忙しい現場にとって、時間を割いてデータを活用することはどのような効果があると考えますか?
朝山さん:現状に満足し、日々を滞りなく店舗運営する“だけ”であれば、データは必要なく感じるかもしれません。
ただ、私たち店舗責任者の役割とは、「もっと店舗を増やしたい」「ブランド価値を高めていきたい」「スタッフのエンゲージメントを高めていきたい」といった思いをいかに現実に近づけるかだと考えています。
そのために、まずは現状のデータを知ることから始めて、それをもとに客観的な視点や新しい視点を得ることが、これからの現場には求められるのではないかと考えます。
立部さん:私が店長として、現場の人間として伝えたいことは、「データ」とはあくまで成果をつくるための手段である、ということです。
私たちはデータのために仕事しているわけではなく、店舗をより良くしていくために仕事をしています。そのために、どのような施策を打てばいいのか、仮説を立て行動を起こすための後押しになるのがデータだと考えます。
たとえば、昨今はエンターテイメント業界に限らず、多くの産業で採用難に直面しています。それをただ嘆くのではなく、過去の採用データや退職データを掘り下げて分析し、うまくいっている店舗と比較して対応策を考えることで、困難を打開できる可能性が生まれるのではないでしょうか。
現場でのデータ活用について、現場視点から分析レポート機能のどのような点がおすすめだと感じますか?
立部さん:先ほど述べた「採用」にまつわる部分に加え、「人材育成」においても非常に役立っています。
分析レポートのおかげで、データを店長のみならずスタッフ全員で共有できるようになりました。当店では、たとえば「シフト作成担当者が人件費を意識してシフトを作成できるようになった」などの効果が出ています。
人件費や残業時間、離職率など、データを見て「なぜ、この数字になっているのか」を考えることで、経験だけに頼らず数字で考えるクセが付きます。これは、職位が上がれば間違いなく必要になるスキルですので、次世代社員の教育としてもよい効果があると思っています。
朝山さん:私はフードサービス事業の視点から、複数の店舗を運営していたり、多業態でブランドを展開していたりする企業さんに分析レポート機能をおすすめしたいです。
分析レポートを使えば、事業全体の平均値と各店舗の数値を把握し、「同じエリア内の店舗」や「同じブランドの店舗」を横串で比較できるようになります。
複数店舗・複数ブランドを運営する企業が、中長期的にどう事業を展開するか戦略を考える際に、分析レポートが有効ではないかと思います。
岡部さんは人事の視点から、どのような点がおすすめですか?
岡部さん:人事担当者としては、組織のレイヤーごとに伝えたい情報を出し分けられるのがおすすめです。
たとえば、各拠点での外国人や障害者の雇用状況は、これまでは人事担当者にしかわからないブラックボックスでした。こうした情報は社会的な関心度も上がっていますので、社内へ適切に共有する必要があります。
分析レポート機能を使えば、簡単にこうした情報を、届けるべきレイヤーに限定して共有できるのでとてもやりやすいです。
ほかには、先ほど少し触れましたが、観測したいデータがあれば、レポートをすぐに作れる点もおすすめですね。
たとえば、弊社のように「定額残業代」を設けている企業は多いと思いますが、「月の残業時間の最大・平均・最小」のレポートを作ることで、設定した残業時間と実態とを比べて、どれだけ乖離があるのか健全性をチェックできます。
レポートをすぐ作れるので定点観測のハードルが下がりますし、不要になったら簡単に削除できるので、データ活用に対する敷居を下げられるのではないかと思います。
「人を大切にする」思いをデータで可視化し、店舗と会社の未来を作る活動へとつなげる
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
岡部さん:弊社には「現場主導」のマインドが根底にあり、人事が提案したことにも賛同が得られやすい環境があります。
経営陣、事業部、現場の各レイヤーと対話をしながら、組織を守り事業を推進するためにSmartHRをさらに活用していきたいですね。
立部さん:スタッフ一人ひとりが人生を豊かに生きていくためには、「働く側」としての知識も必要です。その知識の1つとして、人事や労務について学べる機会を作っていきたいです。
私はこの会社に勤めて長いですが、昔から「人を大切にする」という軸はずっと変わりません。ただ、以前はそれを表現する方法がなく、従業員にとっては空気のように見えづらくもありました。
しかし、今ではさまざまな情報が公開され、データが可視化されることで、その軸を表現し、伝えられる体制が整ってきたと感じます。SmartHRは、それを表現してくれるツールの1つだと考えています。
朝山さん:私は現職へと転職する際に、「飲食を生涯の仕事としていくうえで、誰に、どんな価値を提供し、そのために自分はどんな仕事ができるのか」を考えていました。そのときに「人で勝つ晃商」という理念と出会い、転職の決め手にもなりました。
その理念を実現するために、これからもデータを存分に活用して、店舗や会社の未来をつくる活動に活かしていきたいと思っています。
分析レポート機能を中心とした具体的な活用方法は、同じ課題をもった多くの企業さまの参考になるお話だと感じました。理念の実現に向けて、引き続きご活用ください。貴重なお話をありがとうございました!
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掲載内容は取材当時のものです。
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