120時間の工数が3分の1に。社外コンサルタントと二人三脚で挑んだ人事評価制度の再構築
主な活用機能・サービス
課題
- 人事評価システムの見直しによる表計算ソフトでの運用に大幅な工数増加
- 適切な時期に昇格・昇給できるような人事評価制度への見直しニーズが高まっていた
解決策
- 評価制度改訂に合わせて、人事データベースとしていたSmartHRで導入工数を削減
- 人材制度にマッチしたシステムを選定
効果
- 採用に向けて、定量データをもとにした議論が可能に
- 表計算ソフトでの運用から120時間の工数削減を実現
- 収集した人事データをもとにタレントマネジメントを推進中
株式会社オールハーツ・カンパニーは、「Heart Bread ANTIQUE」「ねこねこ」「PASTEL」などベーカリー4ブランド、パティスリー2ブランドを全国に約200店舗展開する企業です。店舗で製造から販売まで一貫して行う「製販一体」体制にこだわり、パンとスイーツを通した笑顔あふれる世界の創造を目指しています。
同社では、2020年にまずは人事労務領域からSmartHRを導入し業務を効率化。その後、人事評価制度の再構築と並行して2023年に「人事評価機能」を追加し、活用を開始しました。
プラン変更から約1か月という短期間で、SmartHRによる人事評価実施まで至った背景にはどのような取り組みがあったのか。人財開発部 部長の長尾徹道さんと、社外コンサルタントとして今回の取り組みを支援した株式会社Colorida Styleの室田美鈴さんにお話を伺いました。
大きな体制変更に伴い、急遽600名分の評価を表計算ソフトで運用
今回の人事評価制度の再構築について、長尾さん、室田さんの役割を教えてください。
長尾さん:私は人財開発部の責任者として、制度の設計やステークホルダーとの折衝など、プロジェクト全体のマネジメントを担当しました。
前職はホテルチェーンの人事担当で、オールハーツ・カンパニーには2023年6月に入社しました。
室田さん:私は人事コンサルタントとして、社外から人事部門を支援する立場です。今回のプロジェクトでは、主に実際の評価の運用面を担当しました。
SmartHRの人事評価機能を導入する直前は、表計算ソフトで人事評価を運用していたと伺いました。当時の状況を教えていただけますか?
長尾さん:当時は人事部門の体制が大きく変わり、“つなぎ”として急遽表計算ソフトでの運用を行なっていました。
それまで利用していた人事評価システムを見直すことになったのですが、新たなシステムへの切替を検討すべきタイミングでメンバーの大幅な入れ替えが発生しました。そのため、システム検討が棚上げになったまま、期末の通期評価の時期が迫っているという状況でした。
弊社では、通期評価は次期の従業員の待遇や目標設定に影響する重要なものです。私が着任した時点で評価実施まで2か月を切っていたため、システム切替は間に合わないと判断し「通期評価の遅滞なき実施」に集中することとしました。
ただ、評価対象者は全国に散らばって600名近くいるため、3名の人事メンバーだけで運用を行なうのは煩雑を極めることが明らかでした。そこで、室田さんにご支援いただき、運用面の陣頭指揮を執っていただく体制としたのです。
室田さん:期限が決まっていましたし長尾さんの方針も明確でしたので、約1か月で粛々と準備を進めていきました。
まずは、旧体制からの引き継ぎが不十分な状態でしたので、旧システムからエクスポートされた前期の評価シートを探すことから始まり、過去の評価状況を把握、シートを表計算ソフトで再現して、評価者を設定し直す、といったことを行ないました。
運用面で苦労したのは、評価が始まったあとの進捗管理です。人事評価システムのように進捗状況が一覧できるわけではないので、1つずつフォルダやファイルを開いて進み具合を確認し、回収率を随時モニタリングしつつ、遅れそうであればリマインドして、ということをルーティン化してやっていました。
長尾さん:約600名分の前期の評価状況を確認するだけでも、人事側にはかなりの負荷がかかりました。「あの夏のことは思い出したくない」と今でも語り草になっているほどです。
ただ、負荷がかかったのは従業員側も同様で、メールでのやり取りや業務でPCを使わないメンバーの評価実施、店舗ごとの取りまとめなど、かなり煩雑になってしまっていたのではないかと思います。
自社の人事制度とのマッチングが決め手。人事労務から拡張することでスピーディーな導入を実現
そのような状況を経て、SmartHRのプラン変更を決めた経緯を教えてください。
長尾さん:まず人事評価システム以前に「評価制度への見直しのニーズが高まっていた」という背景がありました。
従来、弊社は人事評価が期末の年1回だけでしたが、従業員からは「自分の取り組みが評価されるまで何か月もかかるので、もっと早く評価して欲しい」という要望が上がっていました。会社側としても「従業員のがんばりをより細かく評価したい」という意向がありました。
そこで、取り組みの第一歩として新たに半期評価を実施することとし、評価項目を分けて、従来の通期評価との2本立てで運用することにしました。
先ほど申し上げたように、人事システムの導入し直しは「いったん棚上げ」にしていたので、もともと次の評価までには行なう予定でした。それに加えて「新たに始める半期評価に間に合うよう導入しなければならない」という状況となったのです。
そのスピード感に見合うシステムを検討した際に候補となったのが、すでに人事労務機能を利用しているSmartHRを拡張することでした。
ただ、SmartHRありきで検討が進んだわけではなく、弊社の人事制度にマッチするかどうかがシステム選定の大きなポイントでした。
室田さん:オールハーツ・カンパニーさんの場合、人事制度の特徴として「期中の異動(所属エリア変更)が多い」ということがありました。
異動の都度、被評価者の所属情報を変更しなければならないことを考慮すると、SmartHRなら労務側で所属情報を更新すれば人事評価機能にも自動で反映されますし、人事評価機能の操作性もよく評価者の変更作業もしやすいので、制度とマッチしやすいのではないかと考えました。
長尾さん:導入検討時はセールス担当の方が迅速かつ粘り強く弊社の要望をくんでくださり、また導入決定後はカスタマーサクセス担当の方が適切なフォローアップをしてくださいました。
結果として、導入決定から半期評価の実施まで短期間で実現できたのはありがたかったなと思っています。
120時間の工数を3分の1にまで圧縮。導入後のチューニングにもカスタマーサクセスが伴走
表計算ソフトからSmartHRに切り替えて、具体的にどのような変化がありましたか?
長尾さん:人事側の工数は表計算ソフトで運用していたときの3分の1になりました。特に便利だと感じるのは、評価シートの配付と回収です。
当時は表計算ソフトで作った評価シートを、クラウドストレージに格納して配付・回収していました。
クラウドストレージは通常業務でも利用していますので、決められた評価者以外の従業員が評価シートへアクセスできないよう、ファイルやフォルダ単位で適切に権限を管理する必要がありました。また、評価者が次へ進むたびに手動で権限を設定し直さねばなりませんでした。
この手作業が約600名分と、さらに付随する業務もあり、評価期間中は人事メンバー3名合計で月に120時間ほど残業が発生していました。
これらの作業がSmartHRでは不要となり、人事と評価者、被評価者のやり取りもシステム上ですべて完結できますので、管理の工数は激減しました。以前は3人が全員がかりで対応していた配付・回収の作業が、現在は1名でも対応できるようになっています。
従業員側からも、運用についてのクレームは発生していません。
表計算ソフトと比べて入力や評価がしやすくなったのは言わずもがなだと思いますが、特に、弊社は業務上PCを使わない従業員も多いので「スマートフォンからでもできる」というところにSmartHRの良さを感じてもらえていると思います。
導入から評価実施までを1か月という短期間で実現されましたが、実際の運用でなにかお困りのことなどございませんでしたでしょうか?
室田さん:導入時はスピードを優先し、細かなチューニングは運用しながら行なう前提で進めていたので、運用が始まってからもカスタマーサクセスの方に大いに助けられました。
例えば、当初は「上期の評価」と「下期の目標修正」を一緒に実施する予定で、SmartHRの評価シートを作成していました。しかし、同時並行で行なうのは難しいことが分かり、途中でシートの構成を見直す必要が生じました。
その際には、カスタマーサクセスの方と一緒にSmartHRの画面を見ながら「シートのこの部分を変更してはどうか」「評価のプロセスをこのように見直した方がよいのでは」といったように具体的なアドバイスをいただきました。
結果として、当初の想定よりも多くのチューニングが必要になったのですが、カスタマーサクセスの方が常に伴走してくださっていたので心強かったですね。
効率化の次は、人事データを活用した戦略的人事の土台づくり
今後、SmartHRをどのように活用していきたいですか?
室田さん:現在、チューニングは一通り完了し、上期評価を運用した際の改善点を生かして、下期評価の準備を進めているところです。
半期評価はまだ運用初年度ですので、事前に想定しきれず実際に運用してみないと分からない部分も多いですが、引き続きカスタマーサクセスの方にもサポートをいただきながら、より良い人事評価制度づくりを進めていきたいです。
長尾さん:より良い人事評価制度という観点では、SmartHRの活用推進はもちろん、並行して評価する「人」の教育も進めていきたいと考えています。
例えば、評価では「5段階評価」など定量的な数字だけではなく「なぜその数字を付けたのか」という定性的なコメントも重要です。
SmartHRで作成した評価シートを教材として、評価する際に見るべきポイントやコメントの書き方、適切な目標設定の仕方などを学ぶ「評価者研修」を企画したいと考えています。
人事部門における今後の展望をお聞かせください。
長尾さん:従業員が評価を入力し、評価者が評価し、結果を集計する。この流れが非常にスムーズに行なえるようになりましたので、SmartHRの人事評価機能についてはとても満足しています。
次のフェーズとしては、集まったデータをどのようにタレントマネジメントに活用できるかということを模索しています。
例えば、弊社はこれまで一般的な会社で行なわれているような「異動希望調査」がありませんでした。また、キーポジションへの昇格に明確な基準がなかったり、役職のない若年層の評価が可視化されづらいといった課題もあります。
これらの課題を解決し、会社全体として戦略的に人事を行なっていくうえでは、人事データの活用が非常に重要になると考えています。
来期を目標に、新たに「異動希望調査」や「エンゲージメントサーベイ」などを実施し、タレントマネジメントに必要なデータ収集にSmartHRを活用したいと考えています。そのうえで、集まったデータをどのように人事に反映させていくのか、具体的に設計していきたいです。
従業員の1人ひとりがやりがいを持って働き、そして、パンとスイーツを通してより多くのお客さまへ笑顔を届けられるよう、会社の成長を人事から支えていきたいですね。
人事評価機能を中心とした具体的な活用方法は、同じ課題をもった多くの企業さまの参考になるお話だと感じました。会社の成長を加速させるために、引き続きご活用ください。貴重なお話をありがとうございました!
※
掲載内容は取材当時のものです。
主な活用機能・サービス