公開日:2026/08/31
助成金申請の事務負担を軽くする準備とは?管理職と一般社員の壁を解説

目次
助成金の申請には、制度の要件を読み解く手間と、勤怠や賃金台帳のデータをそろえる作業負担の両方が伴います。同じ申請でも、担当する業務によって、ぶつかる課題の中身は変わるようです。
そこでSmartHR リサーチチームは、助成金の申請や手続きに関わる担当者136名にアンケートを実施しました。
この記事ではアンケート結果をもとに、管理職(n=87)と一般社員(n=49)で助成金申請の課題がどう違うのかを数字で確認し、役割ごとの事務負担を解消し、本来のコア業務に集中するため、SmartHRを活用した「労務データ一元管理」の具体策を解説します。
これから申請に取り組む人事・労務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
助成金の事務負担は、担当する役割で中身が変わる
相次ぐ最低賃金の引き上げを受け、国は業務改善助成金など賃上げ関連の助成金を年々拡充してきました。
コスト増に直面する企業にとって支援策の活用は重要ですが、申請には過去の勤怠実績や賃金台帳の正確な整備・照合が欠かせず、その事務負担が管理部門を圧迫しているという声も聞かれます。
事務負担の重さは、まず全体の数字にも表れています。今回の調査で助成金1件あたりのデータ準備に「3時間以上」を費やす担当者は、全体で55%にのぼりました。準備に半日近い工数を要している企業も少なくありません。

ただ、この負担を担当者ごとに見ていくと、様子が変わります。助成金の申請は、制度の要件を読み解いて方針を決める人と、実際にデータを集めて書類に落とし込む人とで、担う工程が分かれています。今回の調査では、この役割の違いが、そのまま「ぶつかる課題の違い」として表れていました。
ここからは、管理職(n=87)と一般社員(n=49)という役割の軸で結果を読み解きます。
なお本記事の数値は、特記のない限り「助成金制度の活用実態と事務工数に関する調査」(SmartHR、2026年6月23日〜25日、インターネット調査、助成金の申請・手続きに関わる担当者136名)にもとづきます。役割間の差はいずれも傾向として紹介します。
役割で異なる「助成金申請の課題」
助成金申請で「最も苦労する点」やノウハウ面の悩みをたずねると、管理職は「制度・要件の理解」に、一般社員は「目の前のデータの実作業と社内での孤立」に、それぞれ課題が偏っていました。
管理職は制度・要件の理解と適応に苦労している
申請プロセスで最も苦労する点をたずねたところ、管理職で最も高かったのは「助成金の複雑な要件やルールの理解」で46%でした。一般社員では31%にとどまり、15ポイントの差があります。
あわせて「審査基準に合わせたデータ再精査・加工」も管理職で36%(一般社員24%)と高くなりました。制度の要件を正しく読み解き、審査基準に適合させる。手を動かす前の判断の工程が、管理職に重くのしかかっています。
次のグラフのノウハウ面でも傾向は一貫します。「同規模・同業他社の申請効率化手法を知りたい」は管理職で40%(一般社員33%)でした。方針を決める役割だからこそ、「正解の型」を探しあぐねているようです。

一般社員は散らばったデータの突き合わせに追われている
同じ設問を一般社員で見ると、課題は制度理解ではなく、目の前のデータそのものに移ります。「勤怠データと給与計算の不整合の確認・修正」は一般社員で41%と、管理職の32%を上回りました。
「就業規則や賃金台帳の管理・更新不足」も一般社員で35%(管理職28%)と高くなっています。どちらも、申請の書類を書く前の、地道な突きあわせの作業です。
データが複数の場所に分かれ、更新のタイミングもばらばらであれば、実務を担う一般社員ほど、この照合作業に時間を奪われてしまうでしょう。
一般社員は社内に頼れる人がいない
一般社員が抱えるもう1つの課題は、頼れる相手がいないことです。ノウハウ面の悩みをたずねると(複数回答)、「社労士など専門家への適切な相談方法が不明」は一般社員で35%と、管理職の21%を14ポイント上回りました。
また、「経験者が社内におらず手続きが手探り状態」も一般社員で37%(管理職26%)と高くなっています。聞ける相手が近くにいないまま、初めての手続きを進める心理的な負担は、数字以上に大きいのではないでしょうか。
さらに、「他社活用システムの具体的な事例を知りたい」を挙げた割合も、一般社員で37%(管理職30%)と高いものでした。手探りでデータ収集作業を担いながら、相談先も定まらない。実務担当者が孤立しやすい構図がうかがえます。

別々に見える課題は、日常データの未整備でつながっている
結果を横断すると、管理職と一般社員の課題は、まったく別の課題のように見えて、実は一本の線でつながっています。一般社員が「不整合の確認・修正」や「台帳の未整備」に苦しむのは、日々の勤怠・給与・従業員データが別々の場所で管理され、最新化されていないからです。足元のデータが整っていないからこそ、管理職は「要件に合うデータをどう用意すればいいのか」という判断に、いっそう頭を悩ませることになります。
もうひとつ見落とせないのは、一般社員の「孤立」です。専門家への相談の仕方が分からず、社内に経験者もいない状態では、実務担当者が手探りで抱え込むしかありません。これは担当者個人の力量の問題ではなく、ノウハウやデータが個人に閉じ、組織に蓄積されていないことのあらわれです。
ただし、孤立の課題には、データを整えるだけでは届かない部分もあります。「社内に経験者がいない」「他社がどう進めているのか見えない」という悩みは、社外に相談できる相手や、実務の知見を持ち寄れる場があってこそ和らぐものです。足元のデータを組織の仕組みで支えつつ、社外のつながりで知見を補う。この両輪が、実務担当者を孤立させないための現実的な備えになるでしょう。
役割ごとに違う課題を、それぞれの担当者の頑張りで乗りきるのではなく、両者の足元にあるデータを組織として整えることが重要です。日常の労務データが自動で一か所に集まり、最新の状態で保たれていれば、一般社員は「探して直す」作業から解放され、管理職は「要件に合わせて取り出す」判断に集中できます。
SmartHRで役割ごとの課題を軽くする3つの整備
SmartHRは、入社手続きから勤怠管理、給与計算までを一つのプラットフォームでつなぐクラウド人事労務ソフトです。日々の運用のなかで労務データが自動的に蓄積・一元管理されるため、助成金の準備を「データを探す作業」から「必要な情報を取り出す作業」へと変えられます。
ここからは、役割ごとの課題に対応する3つの整備を見ていきましょう。
- 『従業員データベース』で労務データを一元化する
- 『勤怠管理』と『給与計算』の連携でCSV運用の手間を減らす
- 『届出書類』と継続的なアップデートで制度対応を軽くする
『従業員データベース』で労務データを一元化する
すべての起点は、データが一か所に集まっていることです。SmartHRでは、入社手続きや日々の労務手続きを通じて入力された従業員情報が『従業員データベース』に自動で蓄積され、常に最新の状態で一元管理されます。一般社員が最も苦しんでいた「台帳が最新化されていない」「データが散在している」という課題に対して、「探す・集める」工程そのものを減らせます。
同時に、管理職が要件確認の前提とする元データの正確性も担保されます。導入当初は既存の名簿や台帳からの移行に手間を感じるかもしれませんが、一度集約してしまえば、日々の手続きを通じてデータは自動で最新に保たれます。


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『勤怠管理』と『給与計算』の連携でCSV運用の手間を減らす
一般社員の実務で負担になりやすいのが、勤怠データを給与計算に渡す際の確認・修正作業です。勤怠データをCSVで出力し、給与計算システムに取り込む運用では、項目の加工や取り込み設定、ファイルの選択ミスなどによって、確認や修正の手間が発生することがあります。
SmartHRの『勤怠管理』と『給与計算』はAPIで連携しており、勤怠情報を同じプラットフォーム上で給与計算につなげられます。CSVの出力・加工・取り込みを前提とした運用を減らせるため、ツール間連携に伴う作業ミスや再確認の負担を抑えやすくなります。
申請準備においても、日々の勤怠・給与・従業員情報を同じプラットフォーム上で扱うことで、必要な情報を探し集める負担を抑えやすくなります。SmartHR上に蓄積された従業員情報は『人事労務レポート』でも確認・整理できるため、申請に必要な情報を把握しやすくなります。申請のたびに手作業でデータを集めて作り直す運用から、蓄積された情報を確認し、必要に応じて出力・活用する運用へと近づけられます。
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『届出書類』と継続的なアップデートで制度対応を軽くする
管理職の課題だった「複雑な要件の理解」「審査基準への適合」に対しては、正確な元データと、日常の手続きの電子化が土台になります。
SmartHRの『届出書類』は、蓄積された従業員データをもとに、育児休業給付金の申請など社会保険・雇用保険の手続き書類を作成し、電子申請につなげられる機能です。
助成金の申請そのものを行なう機能ではありませんが、日常の届出を通じて入退社や給与の変更履歴が正確に蓄積されるため、審査で厳しくチェックされる台帳の整合性を証明しやすくなります。
なお、管理職・一般社員ともに「最新の法改正や助成金要件に合わせた自動アップデート」を必要な環境として挙げていました(管理職44%・一般社員39%)。SmartHRはクラウドサービスとして継続的にアップデートされます。ただし、就業規則の変更や新しい助成金独自の申請フォーマットなど、手続きの前提となる社内ルールの整備は、労務担当者が個別に対応する必要があります。
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社外の実務者とつながり、他社の進め方を知る
データの土台が整っても、「他社はどう申請を効率化しているのか」「同じ立場の担当者はどう動いているのか」という疑問は残ります。今回の調査でも、他社の申請効率化方法を知りたい管理職は40%、社内に経験者がおらず手探りだと答えた一般社員は37%にのぼりました。
ツールを導入するだけでなく、実務の悩みを相談できる仲間が見つかる環境も提供しているのが、SmartHRのユーザーコミュニティ『PARK』です。
人事・労務の実務に携わる他社の担当者と、知見や工夫を共有できるオンラインの場で、日々の運用や制度対応の進め方について情報を交換できます。社内に相談相手が見つかりにくいときも、同じ課題に向きあう実務者とつながることで、手探りの不安を軽くできるのではないでしょうか。
なお、助成金の要件判断や申請の可否といった専門的な内容は、管轄の都道府県労働局や業務改善助成金コールセンターなどの行政関係機関や、社会保険労務士などの専門家に確認することが前提です。コミュニティは、その前段にある「進め方の情報収集」や「孤立の解消」を支える場として活用しましょう。

申請の負担を、役割で抱え込まない仕組みへ
今回の調査で見えたのは、同じ助成金の申請でも、管理職は「制度・要件の理解」に、一般社員は「散在データの実作業と社内の孤立」に、それぞれ違う課題を抱えているという実態でした。別々に見える二つの課題は、日常の労務データが整っていないという一点でつながっています。
役割ごとの課題を個人の頑張りで抱え込むのではなく、組織の仕組みで支えることが、助成金の活用をためらう理由を減らす近道です。自社の勤怠・給与・従業員データが、いまどこに、どのような状態で散らばっているのか。まずは現状を正確に把握するところから始めましょう。
調査概要
- 調査名:助成金制度の活用実態と事務工数に関する調査
- 調査主体:株式会社SmartHR
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2026年6月23日〜25日
- 回答者:直近1年間に賃上げ関連の助成金(業務改善助成金など)を受給した、または申請手続きを進めている企業(従業員数51〜300名)に勤務し、助成金の申請や手続きに関わっている担当者136名(うち管理職87名・一般社員49名)、本来業務への支障をたずねた設問の回答者は人事労務業務従事者(81名)。
岸本 力
社会保険労務士/CEwin労務コンサルティングオフィス代表
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