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項目検討から集計まで3か月。SmartHR活用で人的資本情報開示を短期間で実現|東京インキ

寺田さん

社名

東京インキ株式会社

業種

IT・インターネット

従業員数

2〜50名

課題

都道府県

北海道

主な活用機能・サービス

活用ポイント

  • 新人事制度の「バリュー評価達成率」を軸にした人的資本情報の開示を実現
  • 3か月で開示項目を決定、担当部門がKPIに責任を持つ体制を構築
  • SmartHRのプリセットサーベイで短期間での人的資本情報開示に成功
  • リマインド機能で従業員サーベイの回答率を100%近くに向上
  • 組織図公開で社内外の興味を高め、さらなる施策成功を目指す

2023年12月に創業100年を迎え、中期経営計画「TOKYOink 2024」で「経営戦略と連動した人材戦略策定」を人事戦略の核として人的資本経営を推進している東京インキ株式会社。同社では人的資本情報の開示を視野に入れ、2023年1月よりSmartHRを導入。「従業員サーベイ機能」の活用で、2023年6月に発表した有価証券報告書での人的資本情報開示を実現しました。

開示項目の検討・決定や推進のポイントなど、人的資本開示におけるSmartHRの活用方法を人事部 副部長の寺田 悠哉さんに伺いました。

インタビュイー

寺田 悠哉 さん

東京インキ株式会社 人事部 副部長

開示項目の目玉は新人事制度にひもづいた 「バリュー評価達成率」

人的資本情報の開示に関して、御社で取り組み始めたのはどのタイミングでしたか?

寺田さん:2022年の12月です。2023年6月に発表する有価証券報告書での人的資本情報の開示が決定していたので、まずは人的資本情報の開示に取り組むため「IRプロジェクト」を発足させました。

IRプロジェクトの概要をお教えください。

寺田さん:理財部、総務部、人事部、企画管理部、社長室など管理部門の中堅メンバー6名で構成されています。IRプロジェクトでは、環境や人的資本についてのデータをまとめたり、外部講習会に参加したりして開示に必要な要件を洗い出しました。情報収集していくなかで、人的資本情報の開示にSmartHRのプリセットサーベイを活用できそうだと感じたのです。

人的資本情報の開示項目はどのように決定したのでしょうか。

寺田さん:開示が望ましいとされている「女性の管理職割合」「男性の育休取得率」「賃金差異」以外では、当社ならではの項目として主に以下を検討しました。

東京インキ独自の開示項目

寺田さん:なかでも「バリュー評価達成率」に関しては、2022年に導入した新人事制度の浸透度を測るうえでも必須と考えていました。

今までの人事制度は、行動と目標の合算した評価で、昇格、昇給、賞与にすべて連動していました。そのため、行動が伴っていなくても目標を達成していれば、昇給・賞与金額が高くなるという課題がありました。新人事制度では、行動指針と目標達成度にもとづいて昇格・昇給・賞与を決定する形に変更したのです。

バリュー評価達成率についてはどのような位置づけなのでしょうか。

寺田さん:新しく設定したバリューは、会社のありたい姿を行動しているかを評価する内容なので、行動が伴ってなければ昇格できません。そのため行動指針のバリューは、役員が定めた「ありたい姿」を体現できているかを測る指標として、人的資本情報として開示しました。

3年前に経営陣が交代するまで、当社はトップダウンで決定した行動指針に沿いつつも、個人の努力によって利益をあげればよいという風土が当社にはありました。改革を実行する手段の1つとして、トップダウンで行動指針の重要さについて発信したことで、当社も変わりつつあると従業員にも伝わったのではないかと思います。

KPIについては、2023年の年明けから私と人事部長の2人で検討・決定して、最終的には経営会議で決定しました。目指すべき数値に関しては、実施後にPDCAを展開しなければわからない部分もあったため、過去の数値をベースに、達成可能と思われる上限の数値としました。

東京インキのVision、Mission、Valueの関連性(出典)有価証券報告書 - 東京インキ株式会社

検討から3か月で開示項目を決定。 担当部門のKPI決定がコミット力を高める

KPI設定をIRプロジェクトメンバー全員ではなく、お二方で決定した背景をお教えください。

寺田さん:初めての試みでもあり、誰も根拠が出せない部分だったので、どこかで誰かが決めなければいけません。そのため、人的資本情報の開示項目に関しては、KPIにコミットするためにも人事部が担うべきと判断しました。IRプロジェクトのメンバーからは開示項目案の意見をもらいましたが、KPIに関しては異論はありませんでした。

IRプロジェクトのメンバーのなかでも、オーナーシップをもつ部門が担当項目のKPIを決定するというわかりやすさもありそうですね。開示項目の決定に至るまでは、どのくらいの期間を要したのでしょうか。

寺田さん:決定までの期間は、項目案を人事部内で策定してから約3か月でした。月1〜2回のスパンで定期的に経営会議で上層部に進捗報告して、最終的には6月の取締役会で決定しました。私を含めたIRプロジェクトのメンバーも「君たちが決めたのだから、しっかりコミットしてもらいたい」と思っているでしょうし、私もそのつもりで各種施策を実施しています。

SmartHRのプリセットサーベイで従来の質問項目も実装

SmartHRの導入から、短期間で人的資本情報の開示を実現できた要因はどこにあるとお考えでしょうか。

寺田さん:やはり、SmartHRのプリセットサーベイの存在が大きかったと思います。前提として、有価証券報告書に間に合わせなければいけません。当社独自のサーベイを策定する時間はなかったため、SmartHRのプリセットサーベイに用意されている項目から、開示内容に合った項目を活用しました。

SmartHRの従業員サーベイ機能には、エンゲージメントを測るためのプリセット項目が用意されている
SmartHRの従業員サーベイ機能には、エンゲージメントを測るためのプリセット項目が用意されている

導入前に「サーベイで簡単に計測できます」とお話しいただいたときに、「人的資本情報の開示に使える」と直感的に感じたのです。その時点では、社内でも人的資本情報の開示について議論されていなかったのですが、従業員満足度に関しては、これまで実施している当社のアンケートを転用できると思っていました。

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IRプロジェクトメンバー間でも、SmartHRを人的資本情報開示に活用するかの議論はあったのでしょうか。

寺田さん:受講したセミナーや外部からも、SmartHRを人的資本情報の開示に活用していて、満足度も高いという情報も得ていたので議論は生まれませんでした。むしろ、SmartHRの活用でスケジュールが間に合うという期待が大きかったですね。

リマインド機能で回収率が大幅アップ。 標語応募3倍の副次的効果も

回答率などサーベイの結果についてはいかがでしょうか。

寺田さん:SmartHR導入前の従業員満足度調査は、紙で年に1回実施していました。当社は子会社を含めると30か所の拠点に700名の従業員が在籍しています。これまでの回答率は90%程度に留まっていたのですが、SmartHRのリマインド機能の活用によって100%近い回収率へと向上しました。

また、人的資本情報の開示とは別にコンプライアンス標語を募集した際には、応募件数は例年の約3倍に増加しました。やはり、入力のしやすさが回答率向上に大きく寄与したのではないかと分析しています。

サーベイ実施時の注意点や工夫した内容はいかがでしょう。

寺田さん:従業員に給与明細の配布よりも前に、初めて従業員へご案内したのがエンゲージメントサーベイの実施でした。3月末段階のデータを収集する必要があったため、3月上旬に配信して従業員もSmartHRの使い方がよくわからないなかで答えてもらいました。

そのため、実際の操作手順を撮影して、視覚的にわかりやすい動画を作成して配信しました。若手従業員は簡単に回答を入力できると思いましたが、職種や年代によっては、PC操作に慣れていない従業員も少なくありません。時間がないなかでプロジェクトを進めるためには、問い合わせ対応をどれだけ少なくできるかが大切だと考えたのがきっかけでした。

お話いただいた工夫によって、問い合わせは想定よりも少なかったのでしょうか。

寺田さん:想定よりもかなり少なかったですね。対応に追われることはなく、データ分析などの工数をしっかりと確保できました。

「組織図の公開」で会社への関心を高め、 さらなる施策成功を目指す

初めての人的資本情報の開示が終わった今、今後ご検討されている課題や施策についてお教えください。

寺田さん:中期経営計画とともにKPIの変更も検討しているので、次のタイミングで項目を大幅に変更する可能性もありますが、バリュー評価だけは継続する予定です。世の中の流れにどのように合わせていくかが重要なので、まずは情報収集を継続的に実施しています。

SmartHRの活用に関してはいかがでしょうか。

寺田さん:健康経営に関するデータ収集を検討しています。2023年は「二次検診受診率」「喫煙率」を算出しましたが、来年に向けて他データの収集にも活用していきたいですね。他にも組織図の公開も検討中です。

組織図の公開にはどのような狙いがあるのでしょうか。

寺田さん:まずは、会社に興味をもっていただくことです。組織図を見ながら、「この人はこのようなことに趣味があるのか」など、会社や従業員同士の興味・関心を向上できればと思っています。

会社への関心を高め、組織変革を促すツールとしてSmartHRを活用したいと語る寺田さん
会社への関心を高め、組織変革を促すツールとしてSmartHRを活用したいと語る寺田さん

「従業員の腹落ちと巻き込み」が人事施策成功の鍵

人的資本開示を含めて、今後は企業規模を問わず人的資本情報の開示は加速していく可能性があります。推進していくために、人事担当者にはどのような行動が求められるのでしょうか。

寺田さん:人事が走り回って、社内のキーマンとのリアルでのコミュニケーションが大切だと思います。

私は人事部に異動して5年以上経ちますが、人事制度改革や人的資本情報の開示だけでなく、従業員を巻き込んで施策を進めるのは本当に難しいと感じています。人事部の部長も私も技術系職種として工場で勤務していました。積極的に現場の声を集められる人材が人事部に配属されるイメージがあります。

現場出身の人事だからこそ感じているのは、人事施策成功の鍵は「従業員にうまく腹落ちしてもらうために、どのように巻き込んでいくか」ですね。そのためにも、まずは経営陣からトップダウンで方針や施策を伝えると同時に、従業員への根回しが重要になります。

従業員の方々へのコミュニケーションはどのように実施しているのでしょうか。

寺田さん:キーマンへの根回しが重要なので、テキストコミュニケーションだけでなく、電話や直接工場に行って話す機会は日々設けています。また当社には労働組合があるので、トップダウンで数字は決められるものの、具体的な活動には労働組合の協力が必要になります。従業員を巻き込まなければいけないので、労働組合の協力がなければ施策は成功しません。

人的資本情報の開示は、あくまでも組織変革の手段の1つ。従業員が今回のプロジェクトに協力したことで、ある程度、会社への関心は高まったと思います。関心がなければ組織は変わっていきません。これを機に「現場の制度に変えてほしい」、「このような福利厚生制度を導入してもらいたい」など、従業員一人ひとりが意見を出せるように、SmartHRを活用していきたいと考えています。

掲載内容は取材当時のものです。

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