管理人事から戦略人事へ。従業員データの活用で商社経営の意思決定を支える
課題
- システム数の増加と複雑化により、運用が属人化していた
- 従業員情報の転記作業など、定常業務に多くの時間が割かれていた
- 人的資本経営の基礎となる「従業員データ」が収集しづらい状態だった
解決策
- 幅広い従業員データを扱えるSmartHRを導入、システム構成を簡素化
- 属人化を防ぐとともに、運用コストを下げ業務プロセスを効率化
- 誰でも使いやすく、自然と従業員データが集まる体制を構築
効果
- 従業員からの問い合わせが大幅減少、月50件の転記作業もゼロに
- 経営陣がサクセッションプラン策定に必要な「従業員データ」の参照が可能に
- 人的資本経営の実現に向けて、人事部が経営判断を支援できる体制に
兼松株式会社は、明治22年(1889年)創業の商社です。ICTソリューション、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の5つの事業を手がけ、「食卓から宇宙まで」と形容される事業領域の広さを誇っています。
同社は、中期経営計画で掲げる「人的資本経営の実現」に向けた取り組みの一環で、既存の人事システムと入れ替えSmartHRを導入。現在は、経営層におけるサクセッションプランの策定に至るまでSmartHRの活用の幅を広げています。
「人的資本経営の実現」や「サクセッションプランの策定」といった抽象度の高いミッションに対し、人事部はどのようなアクションを取ればよいのか。人事部長 兼 人事企画課長の村上さん、人事部 人事企画課 兼 人材開発課の田中さんのお二人にお話を伺いました。
人的資本経営の実現に向けた第一歩はシステムを整備し「従業員データ」を収集しやすくすること
SmartHR導入以前に抱えていた課題を教えてください
村上さん:弊社は、2024年に発表した中期経営計画「integration 1.0」のなかで人的資本経営の強化を掲げています。人事部は、その戦略を策定し具体的なアクションを実行する役割を担っています。
私が人事部長に着任して最初に考えたのが、人事システムに関する属人化や複雑化など諸課題へのアプローチでした。
というのも、戦略を立てるにも、仮説と検証を繰り返すにも、その基礎となる業務プロセスが整理されデータが集まる状態になっていなければ、何も始められないからです。
そこがおろそかなまま拙速にプロジェクトを走らせても、いずれ「これらのシステムはどうつながっているのか?」「このデータはどこから集めればいいのか?」と壁にぶつかり、どこかで行き詰まってしまいます。
「人的資本経営を実現する」という抽象的で大きなミッションだからこそ、まずは地盤固めから始めることが重要だと考えました。
田中さん:具体的には、「システム運用の属人化」や「業務の非効率性」が課題となっていました。
人事部が扱う情報は、個人情報など「秘匿性の高いもの」が多いです。情報管理の観点で、弊社の人事部は情報システム部署から切り離して、独自にシステムを運用してきました。
しかし、時間の経過とともに徐々にシステムの数が増えて複雑化し、部内のごく限られた者にしか操作・保守できない状態になっていました。何かを調整したいと思っても、どのような影響が出るのかわからないので怖くて誰も手を出せなかったのです。これは給与計算や人事評価などの、「誤りがとくにあってはならない業務」を行ううえで大きなリスクになりえます。
また、複雑なシステムは、業務そのものの非効率性にもつながっていました。
システムをいくつも組み合わせて使っていたため、たとえば、あるシステムから別のシステムへ従業員情報を転記する作業が月に50件ほど発生しており、このような「管理のための業務」に人事メンバーの時間が割かれていました。
複雑なシステムゆえの不便さは従業員側にもあり、届出1つにしてもわかりづらく、人事への問い合わせも増えてしまい、お互い余計な時間を浪費していたのです。
これらの課題を解決するためには、保守やアップデートがしやすいよう世の中にある人事システムの標準にそっていること。そして、人事メンバーにも従業員にも使いやすい効率的なシステムであることが必要だと考え、「Fit to Standard」の意識を大切にしていました。
村上さん:システムや業務プロセスを整理する際には、メンバーに対してその必要性や方向性を明確に示し続けることも忘れてはならないと考えています。
今回の取り組みでは、システムや業務は肥大化させず小さければ小さいほどよい、という意味を込めて「Small is Beautiful」というフレーズを掲げ、折に触れてメンバーへと伝えてきました。
システムを小さくして余った時間をどう使うか。その分の人員を削減するということでは決してありません。「人事が本来取り組むべきアクションに時間を使い、より価値が生み出せる役割を増やしていこう」という想いを、しっかり伝え続けていかねばならないと思っています。
労務とタレントマネジメントの「両輪」の強みが魅力。将来を見据えアップデート頻度にも注目してSmartHRを導入
SmartHR導入の決め手は何でしたか?
田中さん:人的資本経営の実現に向け、いわゆる「管理人事」から「戦略人事」へとシフトするためにはタレントマネジメント領域に強みを持ったシステムであることが何よりも重要でした。
ただ、いくらタレントマネジメントに強みを持っていても、必要な従業員データが集まってこなければ意味がありません。データの基礎となる労務領域も同時に強いことが必須条件でした。
そこで、まずは従来使用していた複数の人事システムの構成図を作成し、新しいシステムはどの範囲をカバーできるのかを可視化し、導入検討を進めました。
田中さん:SmartHRは、1つのシステムとしてカバーできる範囲が広く従業員データの一元管理がしやすいこと。そして、多くの機能がありながら「わかりやすさ」に徹底的にこだわることを両立しており、魅力を感じました。
従業員が「わかりやすい」「使いやすい」と思ってくれれば、入力が進み、自然と労務のデータもたまっていきます。「人事のことなら、ひとまずSmartHR」と従業員から思ってもらえたなら、人事メンバーとしてはしめたものですね。
兼松は歴史ある会社です。多くの先輩方が長年かけて築き上げてきた伝統に敬意を払うのと同時に、さらなる高みを目指して常にアップデートし続けていきたいと考えています。その点で、SaaSの特徴の1つでもある機能のアップデート頻度にも注目して導入検討をしました。
SmartHRは他のシステムと比較しても年間のアップデート件数が多く、これが最後のひと押しとなり導入を決めました。
SmartHRのどのような部分に「わかりやすさ」を感じましたか?
田中さん:「あって欲しい場所に、あって欲しい要素がある」でしょうか。「この設定をしたいな」と思ったときに、その設定メニューが画面の意図された場所にきちんとある、といった具合です。またヘルプページも非常に充実していますし、わからないことがあっても担当のカスタマーサクセスの方が丁寧にフォローしてくださるのでとても安心です。
村上さん:色の選び方ひとつ、日本語の書き方ひとつとってもこだわりを感じ、どれも議論を重ねながら作られているのだなと想像しています。
定型業務が大きく改善され、入社手続きやシステム間の転記作業は限りなく減少
SmartHRを導入して、どのような効果を実感していますか?
田中さん:SmartHRの導入で、定型業務はかなり効率化されています。
具体的には、従来は1人あたり20個以上あった入社手続き関連のファイルをメールベースでやり取りしシステムに転記していた作業がゼロに。先ほど申し上げた「従業員情報の変更に伴う毎月50件ほどの従業員データの変更・転記作業」もゼロになりました。
従業員からの人事への問い合わせ数も、体感として大きく減っています。
村上さん:従業員目線で言うと、私は実際に「年末調整」機能でSmartHRを使ってみて効果を実感しました。
以前のシステムは、人事から配付される操作マニュアルとにらめっこしながら「これはどこに入力するの?」「書類はどうやってアップロードするの?」とシステムの画面と格闘していました。
それと比べてSmartHRでの年末調整は直感的に利用でき、あちこち移動や参照をせず1つの流れのなかで申請が完了できたので、操作しやすかったですね。
田中さん:導入前に期待していたアップデートについても期待以上でした。アップデート件数は導入前に確認していましたが、驚いたのはユーザーの要望をしっかりくみ取ってくれる姿勢と速さです。
SmartHRの場合、ユーザーが伝えた要望はしっかり検討いただける印象です。取捨選択はもちろんあると思いますが、実際にカスタマーサクセスの方から「ご要望の機能が実装されました」と連絡いただいたこともありました。こうしてユーザーはさらに要望を上げたくなり、SmartHR全体の改善が加速していくのだと実感しました。
経営陣の意思決定をサポートするために「客観的なデータ」をタイムリーに届けられる体制づくりが進行中
「サクセッションプラン」に関して、どのようにSmartHRをご活用いただいていますか?
村上さん:まさに取り組みの途上ではありますが、SmartHRの「キャリア台帳」機能、「配置シミュレーション」機能を使うことで、プラン策定に必要な情報を、役員がいつでも参照できる体制づくりを進めています。
田中さん:以前は、社長といえども従業員データを自由に確認することはできなかったため、まず人事部長を呼び出して指示し、人事部長が持ち帰って部下に指示し、そうして取りまとめたレポートがようやく社長へと届けられていました。
また、具体的に指示された以外の情報については、どんな要素をレポートへ盛り込むかは担当者次第であり、人によって届けられる情報に差異があることも課題でした。
理想としては、こちらが情報を出すスピードを上げたりレポートに盛り込む要素を統一したりするよりも、役員がもっと自由度高く戦略や発想に思考を巡らせることができるよう、いつでも情報が手元にある状態が望ましいと考えました。
SmartHRのキャリア台帳を使うことで、社歴や過去の評価歴、海外駐在やマネジメントの経験などサクセッションプランの策定に関連する情報が、いつでも社長自ら確認できるようになりました。また、今後はSmartHRを使って実施しはじめた360度評価の情報も盛り込み、さらに多くの客観的な従業員データをタイムリーに活用できる体制を作っていきたいです。
村上さん:キャリア台帳の活用については、まず経営層に利用し始めてもらっていますが、今後は部長・課長のマネージャー層へ範囲を広げていく計画です。
できるだけ多くの客観的な従業員データを届けることで、経営陣がよりよい意思決定ができるよう、環境を整えていきたいと考えています。
SmartHRのタレントマネジメント機能を活用し、会社のさらなる発展を支える人事に
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
田中さん:将来的には、各部門のマネージャー層にもSmartHRのタレントマネジメント機能を活用してもらえるよう、さまざまな準備を進めています。
具体的には、2024年10月からSmartHRの「給与明細」機能を使い始めたので、「分析レポート機能」も駆使して給与や勤怠の情報も含んだ組織の概況をSmartHRで把握できるようになりました。このようにしてデータを収集しながら、従業員が保有するスキルや資格など、「キャリア台帳」「分析レポート機能」で確認できる情報をさらに充実させていく予定です。
各部門のマネージャーが人材の配置や登用を検討する際に、これらの情報を判断材料に使ってもらいたいと考えています。その際、情報閲覧の権限は厳密に管理する想定ですが、従業員データをもう少し自由度高く活用してもらえれば、価値創造の源泉である「人」のことをより能動的に捉えられるようになると思っています。
従業員データがマネージャーの采配を支え、チームのパフォーマンスが上がる。それが社内を巡り巡って、すべての従業員が気持ちよくやりがいを持って働ける環境ができる。その実現のために引き続きSmartHRの活用を進めていきたいです。
村上さん:弊社は営業に強みをもつ会社ですので、短期的には、人事がさらに業務を効率化して営業活動を支援することに時間を使いたいと考えています。
そして、中長期的には人的資本経営の実現というミッションに向け、人事部門を「管理人事」から「戦略人事」へと変えていきたい。まだ取り組みを始めて間もないため、今はとにかく従業員データを集めている途中で、その一部が少しずつ活用できはじめた、という状態です。
弊社は単体の従業員数が約900名です。これは絶妙な数字で、ともすればアナログに管理できないこともありません。ただ、近年は部門や、グループ内の会社を越えた異動の発令も増えており、グループ全体では8,000名以上となることを踏まえると、タレントマネジメントは弊社にとって必要不可欠です。
長い社歴のなかで先人たちが培ってきた経験と、従業員データの活用とをかけ合わせて、兼松のさらなる発展を人事から支えていく。そうなれるように、これからも取り組みを続けていきます。
御社のさらなる発展に向けて、理想の環境を築いていただけるよう引き続きSmartHRが支援してまいります。貴重なお話をありがとうございました!
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掲載内容は取材当時のものです。