成長を可視化できるキャリア台帳。自律的なスキル取得と意識改革に成功
| 社名 | 豊橋信用金庫 |
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課題
- 既存システムはキャリア情報が分散し、蓄積されるのみだった
- データ加工が難解で、特定の担当者しか作業できず属人化していた
- 自律的なキャリア形成が難しく、“やらされ感”のある風土があった
解決策
- 分散していたデータを一元管理できるプラットフォームを採用
- キャリア台帳を早期公開し、遊び心のある活用で浸透を図った
- 職務に応じたキャリア台帳の権限設定で、育成を意識づけ
効果
- キャリアに関する担当者のデータ抽出工数が大幅に短縮
- 資格を取得する職員が増加し、資格保有者を中心に部署を新設
- 信金業界のエンゲージメント調査でスコアが基準年度から約30%上昇
愛知県豊橋市を中心に店舗を展開する豊橋信用金庫。地域密着型の金融機関として、営業エリアを限定するからこその「狭域高密度」な事業戦略を掲げ、お客さまと長く深く関わることで、信用され、頼られ、愛される金融機関になることを基本方針としています。
同金庫では、職員の資格やスキルの管理が紙や旧システムで分散しており、データの活用が進まないのが課題でした。その解決を目指して、人事・労務からタレントマネジメントまでを一元管理できるプラットフォームとしてSmartHRを導入。直感的なUI/UXを活かし、キャリア台帳を「成長記録」として職員に早期公開することで、自律的なキャリア形成とエンゲージメントの向上を実現しています。導入の背景や取り組みの工夫、得られた効果について、人事部・人財戦略課の西郷さんにお話を伺いました。
自律的なキャリア形成につながりにくかった組織風土
SmartHRの導入以前に感じていた課題についてお聞かせください。
西郷さん:以前から利用する基幹システムにもタレントマネジメントに近い機能があったのですが、実態としては「ただデータを集めているだけ」の状態で、タレントマネジメントには程遠い状況でした。
たとえば、職員が公的資格や検定試験に合格した際、営業店から人事部へ紙で報告が上がってきます。それを人事担当者が手作業で表計算ソフトなどのリストに落とし込み、その後でシステム入力する二重三重の手間が発生していたんです。都度確認が必要になるうえ、入力エラーの原因にもなります。そのため、報奨金の支払いや受験料の補助が漏れてしまうリスクも潜んでいました。
また、データの加工が非常に難しいのも課題でした。経営陣から「この資格の保有人数を出してほしい」「こういうスキルをもつ職員はいるか」と問い合わせがあっても、すぐに答えられません。
システムの仕組みを理解するのにも時間と手間がかかりましたし、バラバラに管理されたデータをつなぎあわせて一からリストを作り直さなければならず、大変な労力がかかっていました。そのため、作業に慣れた特定の人事担当者しかできない属人化も問題でした。

以前のシステムについて、職員のみなさんの反応はいかがでしたか?
西郷さん:前提として、以前のシステムは全職員には公開されておらず、職員自身が自分が何の資格をもっているのか、会社からどう評価されているのかを確認できない状態でした。自分が何の資格やスキルを保持していて、次のステップに向けて何をすべきかがわからないため、「この資格を取ってください」とアナウンスしてもどうしても“やらされ感”が出てしまいます。
そのため上司も部下も育成の方向性をあわせることが難しく、自律的なキャリア形成につながりにくい組織の風土として大きな壁を感じていました。
新しいシステムを検討する際、SmartHRを選んだ決め手を教えてください。
西郷さん:当初はタレントマネジメント機能に特化したシステムを探していたのですが、比較検討するうちに「果たして職員が情報入力してくれるだろうか」「結局、経営陣や人事だけが使うシステムになってしまわないか」などの疑問が湧いてきたんです。
そこで、理事長や人事担当役員と話し合いを重ねるなかで「タレントマネジメント単体ではなく、給与から労務管理、キャリア情報まで、すべてを一元管理できる仕組みを入れるのがベストではないか」と提案したところ賛同を得られ、そのタイミングでSmartHRを検討候補に加えました。
複数のシステムがあるなかで、SmartHRのどのような点を評価いただきましたか?
西郷さん:3つのポイントがあります。1つ目は、UI/UXの素晴らしさとデザイン性です。以前のシステムとは比べものにならないほど見やすく、直感的に操作できます。
これは少し違った角度の話ですが、信用金庫業界ではすでに実績のあるシステムを導入するケースが多いんです。しかし、あえて業界で先駆けてSmartHRを導入したことで、職員が「うちの会社は最新のシステムを使っている」と周囲の人に自慢できるようなインパクトがありました。実際に導入後、当金庫で年末に「今年印象に残った庫内の出来事や取り組み」を問うアンケートで、SmartHRの導入が堂々の第2位に選ばれました。システム導入がこれほど好意的に受け止められたことに驚きを感じています。
それほど現場のみなさんの印象に残ったのですね。ほかはどのような点を評価いただきましたか?
2つ目は、プラットフォームとしての将来性と開発スピードです。お話を伺っていると、SmartHRは要望に対するアップデートが圧倒的に速く、今後のビジョンや戦略、開発ロードマップの提示も明確で、経営陣に対しても「将来性のあるシステム」として強く推薦できました。
そして3つ目は、営業担当者の伴走と手厚いサポートです。実は、信用金庫業界は特殊なネットワーク環境にあります。クラウドサービスを業務PCで利用するためには、厳しいセキュリティ審査を通す必要があり、通常は数か月かかります。
この壁にぶつかった際、SmartHRの担当者の方が一緒にセキュリティ審査の話し合いに参加してくださり、専門的なやり取りを代行して突破口を開いてくれました。この手厚いサポートがなければ、スムーズな導入は実現しなかったと思います。
職員のための「成長記録」としてキャリア台帳を早期展開
導入を進めるにあたり、社内への浸透で工夫されたことはありますか?
西郷さん:まずは、賞与や給与明細の閲覧をSmartHRに切り替えるタイミングで一斉に導入を案内しました。ただ、その際に事前の説明会などは一切実施しなかったんです。
これは「マニュアルがなくても、なんとなく触っていれば直感的に理解できるUI」であることが大きな理由です。若干、賭けの要素もありましたが、期日までに9割以上の職員がアカウント登録を完了してくれました。

そして、一番の工夫はキャリア台帳をあえて未完成の段階で早期に公開したことです。
本来のスケジュールでは、以前のシステムからのデータ移行がすべて完了し、電子申請(ペーパーレス化)を一定程度進めた後に公開する予定でした。しかし、給与明細が見られるようになったり、各種申請を電子化しただけでは、職員から「人事部の業務が楽になるだけのシステム」と誤解されてしまう懸念があります。
職員が自分たちにとっての活用メリットを感じられなければ、社内システムの自発的な活用は進みません。そのため、まずは職員自身がもつ資格などの基本情報だけでも見られるように、前倒しで公開に踏み切りました。
その際、キャリア台帳ではなく「成長記録」と名付けて公開案内をしました。職員一人ひとりが、自分がどう成長してきたかをつづる日記のように使ってほしい、そんなメッセージを込めています。
成長記録(キャリア台帳)は、閲覧権限も細かく設定されているそうですね。
人事異動や昇格を見据えて、閲覧権限を4段階で設定しています。
1つ目は「メンバー(一般職員)」で、自分自身の基本情報、スキルや評価、保有資格・試験、研修の受講履歴のみが閲覧可能です。2つ目の「管理職(部長・支店長など)」は、それに加えて自身の部下全員の情報と人事評価を閲覧できます。
3つ目の「役員」には、異動や登用のシミュレーションに必要な「現在の職位・職能の経験年数」や、表彰・受賞履歴の情報まで閲覧できる権限を付与しています。そして4つ目が、勤務態度やハラスメントなどの情報を含めて、全職員のすべての人事情報を見られる「リーダー(理事長・人事担当役員)」となっています。
このように、役職ごとの目的にあわせて緻密に権限設計し、キャリアや育成に関して日常的に意識できるようにしました。

「遊び心」を取り入れたサーベイで、回答率90%以上を維持
従業員サーベイも積極的にご活用いただいていると伺いました。
西郷さん:従業員サーベイは非常に役立っています。以前は他社のアンケートツールを使って研修の受講報告を集めていましたが、SmartHRの従業員サーベイに切り替えたところ、カスタマイズできるリマインド機能の効果もあって回答率がほぼ100%に跳ね上がりました。
そこで、人事評価制度の刷新のタイミングにあわせて「エンゲージメントサーベイ」「キャリアサーベイ」「心理的安全性サーベイ」を実施しました。これらの回答率も常に90%以上を維持しています。
職員の方が楽しく利用できるよう「遊び心」も取り入れているそうですね。
はい。当金庫には12体のオリジナル動物キャラクター「マーチングバンド応援隊」がいるのですが、従業員サーベイを使って「推しキャラ総選挙」を実施したところ、なんと86%もの職員が回答してくれました。1位になった「シロクマさん」は、新しいデザインにリニューアルした証書や現金封筒などのキャラクターデザインにも採用されています。

また、先述した「成長記録(キャリア台帳)」にも、こうしたエッセンスを取り入れています。
人事部に在籍する若手の女性職員たちと社内報の企画を考えていた際、「MBTI診断がはやっている」と話題になりました。そこで、カスタム項目に「MBTI」や「血液型」「出身大学」などを登録できるようにしたところ、職員間で「あなたもINFP型(仲介者)なんだね」などと会話が生まれ、多くの職員が自主的に登録してくれました。
いかにも仕事らしい真面目な項目だけでなく「遊び心」を取り入れることで、システムを開くことへの心理的ハードルが下がり、とくに若い世代の活用が進みました。
自ら進んで資格を取る職員が増加し、適材適所の配置を実現
導入後、業務効率化や組織の変化としてどのような成果を感じていますか?
西郷さん:業務効率の面で劇的な変化がありました。従来、特定の資格保有者や最短経験年数を満たす昇格候補者の抽出は、複数の画面を見比べて作業する必要があり、30分ほどかかっていました。
今では、スキル・資格・研修で条件を選択するだけで一瞬でリスト化されますし、HRアナリティクスを用いて昇格候補者の分析ができます。ミスも生じませんし、圧倒的な時短につながっています。
また、ペーパーレス化も一気に加速しました。象徴的な事例として、育児休業中の職員の手続きがあります。以前は、休業中の手続きのために、わざわざ赤ちゃんを抱いて人事部まで申請を出しに来てくれていたんです。
これは本当に申し訳ないと思い、SmartHRの従業員情報申請とスマホアプリを使い、スマホから申請できるフォームを作成しました。現状の進捗率は60%ほどですが、2026年中に社内の紙申請をほぼゼロにするため約80の申請項目の電子化を進めています。
職員の皆さんの意識や、タレントマネジメントの観点での変化はいかがですか?
西郷さん:「成長記録」として自分のスキルが可視化されたことで、自ら進んで資格を取得する職員が明らかに増えました。
ここ数年で、DXや企業コンサルティングに関する推奨資格を増やしたのですが、職員が積極的に受験し、合格後に自分でSmartHRに登録してくれるようになりました。実際、今年4月に新設した「サイバーセキュリティ対策課」には、そうした資格を自主的に取得していた職員を登用するなど、適材適所の配置にデータが活きています。
また、以前は課題だった育成に対する意識もだんだんと強まっています。SmartHRの導入などをふまえ、「人事が本気で組織を変えようとしている」姿勢が現場に伝わり、管理職も部下の育成により強い関心を抱くようになっています。
一例として、信用金庫業界の中央機関が提供するエンゲージメント調査で、当金庫のスコアは直近で基準年度から約30%上昇し、業界内でもトップ3に入る数値を記録しています。
今後の展望についてお聞かせください。
西郷さん:まずは、導入当初からの目標である「完全な一元管理」を今後2年以内に実現したいと考えています。給与や勤怠のデータもスムーズに連携させ、すべての情報がSmartHRに集まる状態をつくることが直近の目標です。
2026年度からは人事評価機能も活用をスタートしました。また、近日中にスキル・資格・研修を使い、スキルマップの作成も進める予定です。サーベイで集めた「一緒に働きたい人の特徴」などの声をもとにリーダーシップの項目を定義し、それを人事評価の個別評価(人間力評価)やスキルマップに落とし込んでいます。これにより、さらに戦略的で納得感のある人材登用や人事配置、育成シミュレーションをしていきたいです。
キャリア台帳の早期展開から取り組みの際の遊び心まで、貴金庫がいかに職員のみなさまの“やらされ感”を出さず、「従業員視点」でシステム活用しているか伝わりました。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました!
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掲載内容は取材当時のものです。
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