公開日:2026/07/09
管理職のフィードバックを支える人事評価データの仕組み

目次
「指導したいのに、踏み込めない」。そんな迷いを抱える管理職は少なくありません。ハラスメントへの社会的な関心が高まるなかで、「どこまでが正当な指導か」の線引きに迷い、本来必要なフィードバックまで控えてしまう——。
SmartHRが部下をもつ管理職548名に実施した調査では、こうした"指導のためらい"が、本人の性格やスキルよりも「会社による支援の質」に大きく左右されることがわかりました。本記事では、調査データをもとに指導をためらう本当の要因をひもとき、評価・記録の仕組みでフィードバックを支える方法を解説します。
【1】管理職の7割が「必要な指導」をためらう実態
多くの管理職は「指導したくない」のではなく、「自信をもって指導できる材料がない」状態に置かれています。SmartHRが部下をもつ管理職548名に行なった調査では、その実態がはっきり表れました。
(1)多くの管理職が必要な指導を控えている
ハラスメントへの社会的な関心が高まるなかで、「どこからがパワハラか」の判断に迷い、本来必要な指導まで手控えてしまう管理職が増えています。本記事では、この課題を「評価・記録の仕組み」でどう乗り越えるかに焦点を当てて解説します。
パワーハラスメントの類型や対応については、以下の記事もあわせてご覧ください。
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(2)約7割が指導を控えた経験をもつ
調査では、過去1年で必要な指導を見送ったり表現を和らげたりした経験のある管理職が7割超(71%)にのぼりました。ただし本記事で注目したいのは、この割合が「会社による支援のあり方」によって大きく変わるという事実です。全体傾向は出発点にすぎません。次章では、支援の質ごとに指導行動がどう変わるのかを読み解きます。

対象:部下を持つ管理職548名
※出典:部下を持つ管理職に対する調査(SmartHR調べ/インターネット調査/調査期間:2026年6月2日〜6月4日/有効回答:部下を持つ管理職 548名)。以下、本記事の数値はすべて同調査によります。数値は端数処理の関係上、合計が100%にならない場合があります。
【2】指導回避は「研修不足」ではなく「支援の質」の問題
指導回避は個人のスキル不足ではなく、会社による支援の「質」によって増減します。意外なことに、最も指導を回避していたのは「一般的なハラスメント研修だけ」を受けた層でした。
本調査では、会社からの支援状態を次の3類型に分けて比べました(「わからない」と答えた層は除外。3類型の合計は487名)。各類型の人数と、3類型に占める割合(構成比)は次のとおりです。
- 手厚い支援群:具体例を交えた明確な基準や研修がある(168名/構成比34%)
- 研修のみ支援群:一般的なハラスメント研修はあるが、現場の指導に直結する基準はない(161名/構成比33%)
- 無支援群:基準は特になく、個人の裁量に委ねられている(158名/構成比32%)

対象:部下を持つ管理職、会社からの支援「わからない」を除く 487名
(1)一般研修だけの「中途半端な支援」が最も指導を回避(同群内の81%)
指導を「見送った・極端に和らげた」経験がある割合を各類型の人数を母数とした「群内割合」で見ると、研修のみ支援群が81%(161名中)と突出して高く、無支援群(74%/158名中)や手厚い支援群(67%/168名中)を上回りました。基準のない知識だけの研修は、リスク意識だけを高め、かえって指導を遠ざけてしまうおそれがあります。

対象:部下を持つ管理職、会社からの支援「わからない」を除く 487名
(2)部下を傷つける不安が「言葉選び」中心の準備につながる
研修のみ支援群では、指導をためらう理由として「部下のモチベーションを下げてしまう懸念」72%、「パワハラと指摘されるリスク」が26%といずれも全類型で最も高い結果でした。その表れとして、指導前の準備が「言葉選びや伝える順序」に偏る割合が45%(最高)に達する一方、客観的なデータを集める準備は27%にとどまっています。

対象:部下を持つ管理職で指導を見送った経験のある方、会社からの支援「わからない」を除く 360名

対象:部下を持つ管理職で指導を見送った経験のある方、会社からの支援「わからない」を除く 360名
【3】自信を生むのは「研修で得た知識」ではなく「基準の共有」と「事実の記録」
先ほど見た通り、管理職が指導をためらう最大の理由は「部下のモチベーションを下げてしまう懸念」(研修のみ支援群で72%)でした。
だからこそ鍵になるのは、指導を「相手を否定するダメ出し」から「事実にもとづく成長支援」へ変えること。そしてそれを実現できるかどうかは、個人の話術や研修で得た知識ではなく、「正当な指導の基準が共有されているか」「日々の事実が記録されているか」という会社の支援基盤に左右されます。
3類型を比べると、その差がはっきりみえてきます。
(1)研修のみ支援群は、準備が「言葉選び」に逃げて事実に向かわない
その不安は準備行動に表れます。研修のみ支援群では、先ほど見た通り、指導前の準備が「言葉選びや伝える順序」に偏る割合が45%と全類型で最多に達する一方、客観的なデータを集める準備は27%にとどまります。
知識はあっても判断の基準がないと、人は「何を言うか」より「どう言うか」に逃げ込みやすいのです。
(2)支援を体験した群ほど「基準」と「可視化」をさらに求める
意外なことに、基準や記録の価値を最も強く求めていたのは、すでに手厚い支援を受けている群でした。
自信をもって指導に向き合うために必要な環境をたずねると、手厚い支援群は「『ここまでが正当な指導』という基準の明確化(43%)」や「日々の行動や成果が可視化・蓄積される仕組み(35%)」を強く挙げています。事実にもとづくマネジメントを一度体験すると、その効果を実感し、さらに磨こうとするわけです。
その出発点となる「正当な指導の範囲」も確認しておきましょう。厚生労働省はパワハラを「①優越的な関係に基づいて、②業務の適切な範囲を超えて行われること、③身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること」の3要素をいずれも満たすもの、として定義しています(出典:パワーハラスメントの定義について, 厚生労働省)。
目的・手段・程度が業務上妥当な指導は、原則としてハラスメントには当たりません。この線引きを組織で共有しておけば、「指導してはいけない」という誤解による過度なためらいを防げます。

対象:部下を持つ管理職、会社からの支援「わからない」を除く 487名
※「あてはまるものはない」は除く
(3)支援の質が高い群ほど、印象や記憶に頼らない
評価のときに客観データ(行動記録や数値進捗)を重視する割合は、手厚い支援群で58%に対し無支援群では30%。逆に「直近の印象や記憶」に頼る割合は、手厚い支援群16%・無支援群39%と逆転します。
支援基盤がある群ほど事実をもとに、ない群ほど記憶や感覚をもとに指導している——この差が、指導の迷いやすさを分けています。

対象:部下を持つ管理職、会社からの支援「わからない」を除く 487名
※「その他」は除く
【4】SmartHRで「正しい基準認識」と「記録にもとづくフィードバック」を実現する
ここまで見てきた「日々の指導をためらう」課題は、突き詰めると(A)指導する側がハラスメントを気にして指導に自信が持てていない、(B)判断のよりどころになる基準と記録がない、の2点に集約されます。
日々の指導の延長線として、この2つを人事評価・育成の基盤で支えるのがSmartHRの考え方です。SmartHRは「研修状況を把握して支援の質を上げる」仕組み、「評価の基準を共通言語にする」仕組み、「日々の記録を残す」仕組みを組み合わせ、管理職が自信をもって事実にもとづく対話をできる状態を後押しします。
(1)研修状況を正しく把握して支援の質を上げる『スキル・資格・研修』機能
2章で見たように、最も指導を回避していたのは「一般的なハラスメント研修だけ」を受けた研修のみ支援群でした。知識を伝えるだけの研修はリスク意識を高める一方で、「どこからが正当な指導か」という基準認識までは育ちにくいのが実態です。
SmartHRの『スキル・資格・研修』機能を使うと、従業員ごとの研修受講状況やスキル・保有資格を一覧で把握でき、誰にどの研修が不足しているかを管理職・人事が判断できます。把握した不足を、基準認識を養う研修につなげられるのが第一の効果です。
さらにオプションの『学習管理』機能を使えば、研修内に理解度テストを設けられます。合格条件を設け、テストに合格すると研修を修了したと判定するため、研修受講者の基準認識を揃えることに役立ちます。
機能について
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スキル・資格・研修
(2)評価基準を共通言語にする『人事評価』機能
SmartHRの『人事評価』機能では、評価シートの作成・配付・進捗管理・回収・集計から給与額や賞与額の決定までをシステム上で一元化できます。業績評価・情意評価(勤務態度や意欲の評価)・能力評価・目標管理制度(MBO)など、自社の評価制度に合わせて評価シートを柔軟につくれるため、「何を基準に評価・指導するか」を上司と部下で共有しやすくなります。
また『360度評価・フィードバック』専用テンプレートを使えば、少ない工数で多面的なフィードバックを集められます。評価結果の分布をグラフで可視化し、甘辛調整を行なう機能もあります。

機能について
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人事評価
(3)日々の記録と対話を残す(キャリア台帳のメモ・面談記録)
指導の「根拠」を支えるのは、評価期間を通じて積み重ねた日々の記録です。SmartHRでは、『キャリア台帳』の『面談記録・メモ機能』で1on1やキャリア面談のメモを記録・管理し、過去の行動や成果を振り返りながら対話できます。これにより、記憶や印象に頼らず、事実をもとにフィードバックを組み立てやすくなります。
(4)画面イメージと活用ステップ
SmartHRで「正しい基準認識」と「記録にもとづくフィードバック」を始める流れは次のとおりです。
- 『スキル・資格・研修』で研修状況を把握し、不足している基準認識の研修を補う
- 自社の評価制度に合わせて評価シート・基準を作成する
- 期初に目標を設定し、双方が確認できる形で記録する
- 1on1や面談の記録を日々ためる
- 蓄積した事実をもとに評価・フィードバックを行なう

【5】まとめ:指導の不安を「仕組み」で減らす
管理職が指導をためらう最大の理由は「部下のモチベーションを下げてしまう懸念」でした(研修のみ支援群で72%)。「パワハラと指摘されるリスク」(27%、同群)よりも、まず"相手のために良かれと思って"言葉を飲み込む——これが現場の実態です。多くの管理職は、保身ではなく部下への配慮から必要な指導を控えています。
裏を返せば、指導が「相手を否定する主観的なダメ出し」ではなく「事実にもとづく成長支援」だと伝わる形をつくれれば、モチベーションを下げる不安は小さくできます。調査でも、客観データを重視する層ほど印象や記憶に頼らず指導でき、手厚い支援群は「基準の明確化(43%)」と「日々の行動・成果が可視化される仕組み(35%)」を求めていました。指導の質は本人の話術よりも、「会社がどんな支援基盤を用意しているか」に左右されます。
SmartHRの『スキル・資格・研修』で基準認識を育て、『人事評価』で基準を共通言語化し、日々の記録の仕組みで事実を残せば、上司と部下が同じ事実を見ながら対話できる状態に近づけます。指導の不安を、個人の頑張りではなく仕組みで減らしていきましょう。

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