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導入事例

全国150事業所の年末調整が1か月から9日へ。社用端末なしの現場にも9割浸透

SmartHRとKONOIKE GROUPのロゴ、およびロゴの前に左から佐藤さん、佐々木さんが立っている

課題

  • 現場従業員の多くは社用端末を持たず、連絡手段が朝礼・掲示板・声かけ中心だった
  • 労務手続きを紙で運用していたため、依頼から完了までに1か月ほどかかっていた
  • 総合職と専門職で人事管理システムが分かれ、制度変更のたびに二重対応が発生していた

解決策

  • ITツールに不慣れな従業員でも迷わず使える操作性を評価し、SmartHRを選定
  • 年末調整を起点に、段階的に対象を広げて労務手続きの窓口をSmartHRへ一元化
  • 現場での定着を促すため、スマートフォン向けアプリの利用を前提に展開

効果

  • 年末調整の回収期間が1か月から9日に短縮。約13万枚分のペーパーレス化を実現
  • アカウント登録率93.7%、アプリインストール率91.9%と、従業員全体に利用が浸透
  • 毎月の給与明細をスマホアプリで受け取る流れが、社内通達の新たな入り口に

鴻池運輸株式会社は、物流を中核に鉄鋼・食品・メディカル・空港など幅広い分野で事業を展開する総合物流企業です。

従業員数は連結で約25,000名、鴻池運輸単体でも約14,000名にのぼります。全国に約150事業所を構えています。同社では、本社や各拠点の管理・運営を行う総合職と、現場の第一線を担う専門職とで、人事・労務の運用とシステムが分かれていました。とくに現場の専門職は、社用端末やメールアドレスをもたない従業員が多く、手続きは紙と担当者による個別フォローに頼らざるを得ませんでした。

この状況を変えたのが、労務手続きにおける入り口としてのSmartHRの導入です。現場でも迷わず使える操作性と、一問一答形式で進められる「年末調整」機能が決め手となりました。導入後、年末調整の回収期間は約1か月から約9日へ短縮され、約13万枚分のペーパーレス化を実現しています。

今回は、導入プロジェクトを主導された人事部の佐々木さん、佐藤さんに、導入の経緯から現場定着の工夫、そして今後の展望までお話を伺いました。

職種により、システムと手続き方法が異なっていた

SmartHRの導入以前、人事からの通達はどのように従業員の方々へ届けていましたか。

佐藤さん:弊社は単体で約14,000名の従業員がおり、そのうち約10,000名は現場の第一線で物流を担う従業員です。勤務は交代制で、シフトも日々変わります。

現場の業務では基本的にパソコンを使用しないため、個人用の端末は支給しておらず、事務所にある共有の端末に触れる機会もほぼありません。

そのため、当時は人事から何か通達しようとすると、上長を介して朝礼で伝えてもらったり、掲示板に張り出して確認してもらったりしていました。

ただ、この方法ですと、「聞いたが忘れていた」「掲示板をよく見ていなかった」といったことがどうしても起きていました。結果として、そのたびに担当者が一人ひとりに声をかけて、抜け漏れを防いでいました。

笑顔で身振り手振りを交えながら話をする人事部の佐藤さん
人事部の佐藤さん

年末調整などの労務手続きはいかがでしたか。

佐藤さん:年末調整では、専門職(現場の従業員)へ紙の書類を配布していました。各拠点で記入内容をチェックしたあと、表計算ソフトに取りまとめてダブルチェックをし、ようやく人事管理システムへ入力していました。

書類の回収は、余裕を見て3週間の期限を設定していましたが、間に合わないケースも多く、結果的に1か月ほど要していました。回収後の差し戻しも多く、空欄のままだったり、記入場所を間違えていたりと、各拠点の担当者が個別にフォローせざるを得ませんでした。

佐々木さん:もう1つの大きな課題は、総合職と専門職とで運用がまったく異なっていたことです。

それぞれ別の人事管理システムを使っていたため、人事制度に変更があるたびに、両方のシステムへ反映しなければなりませんでした。ほかにも、担当者が双方の操作を覚える必要がある、ベンダーへの対応やインフラの利用料が二重にかかる、といったデメリットがありました。

そもそもシステムが2つに分かれていたのは、総合職と専門職とで人事制度が違っていたためです。ただ、会社としては制度を1つに統一する方針で進めており、それにあわせてシステムのあり方も見直す必要がありました。

現場の年末調整から着手。SmartHRを「フロント」に選んだ理由

そうした課題のうち、どこから手をつけたのでしょうか。

佐藤さん:まず取り組んだのは、専門職の年末調整の効率化です。私自身、支店で現場の労務管理を担当していたときから、紙での回収や差し戻しに多くの時間を取られることを、課題に感じていました。

そこで、なんとか電子化できないかと、人事管理システムの展示会などに足を運んで情報を集めていました。ちょうどそのころ佐々木が入社してきて、複数のシステムを一緒に比較検討し、最終的にSmartHRに決めました。

佐々木さん:選定にあたって、人事管理システムの全体像は、それぞれ強みをもつ仕組みの組み合わせで構想していました。なかでも、従業員が最初に触れる「フロント」は、使いやすさによって現場での定着が変わってくる部分です。だからこそ、操作や入力のしやすさを重視し、その点でSmartHRがいちばんよさそうだと判断しました。

ストライプシャツを着た人事部の佐々木さんが、両手を広げて話をしている写真
人事部の佐々木さん

「フロント」としての使い勝手のよさは、どのような点で感じられましたか。

佐藤さん使い勝手のよさを最も感じたのは、年末調整が一問一答形式で進められることです。年末調整の仕組み自体がわからなくても、質問に答えていくだけで手続きを完了できます。労務手続きに不慣れな従業員でも使いやすそうだと感じました。

使い勝手に加えて心強かったのが、弊社と同じく全国に拠点があり、現場の従業員も多い同業他社さんのお話です。実際の運用についてアドバイスをいただけたので、自社で展開するイメージをもてました。

佐々木さん:導入が決まってからも、SmartHRのユーザー会に参加し、「現場でパソコンを使わずに働く従業員が多い」という他社の話をたくさん伺いました。

先に導入された企業の知見をあらかじめ共有いただけたおかげで、スムーズに展開を進められました。同時に、「どんなシステムも、地道に取り組まなければ定着しない」という覚悟をもてました。

約150事業所にSmartHRが浸透。二次元コードとマニュアルで支えた現場展開

導入後、社内への展開はどのように進めましたか。

佐藤さん:まず、各支店の担当者を集めて説明会を開き、SmartHRの概要から、年末調整の操作手順までを盛り込んだマニュアルを配付しました。

「従業員がマニュアルを見て、その手順に従えば自己完結できる」状態を目指し、支店の担当者と連絡を取り合いながら展開していきました。

マニュアルは一度つくって終わりではなく、うまくいかなかった点や現場で新たに気づいた点をフィードバックしてもらい、随時修正しています。年末調整のマニュアルは毎年つくり直していますし、同じ年度のなかでも複数回は改訂しました。

展開する際に工夫された点はありますか。

佐々木さん:とくに注力したのは、最初のアカウント登録です。ここが、現場展開の成否を左右するポイントだと考えていました。

現場で働く専門職の従業員は、社用メールアドレスをもっていないため、メールで招待すると私用の端末へ送ることになります。すると、携帯電話会社のフィルターに引っかかって届かなかったり、普段メールをあまり使わないため読まれなかったり、といったことが起こりえます。

そのため、招待メールに頼らず、「二次元コードからスマホアプリをダウンロードしてください」という方法に統一しました。各営業所には二次元コードを載せたポスターを掲示し、マニュアルも「スマホアプリ」の利用を前提とした内容にしました。

佐藤さん:それでも対応が難しい場合は、従来どおり紙に記入してもらい、担当者が個別にフォローするようにしました。「100%のデジタル化」を最初から目指すのではなく、個別のフォローも必ず発生する前提で進めました。

導入後、現場の皆さんの反応はいかがでしたか。

佐藤さん:初年度は「まだ慣れない」という声もありましたが、2年目以降は「楽になった」「時間の短縮につながった」といったポジティブな意見が増えてきました。

新しいものに対しては、最初に一定の抵抗感が生まれる前提で、少しずつ浸透させていくことを意識しています。

佐々木さん:各拠点を訪れた際に「初年度はいろいろとご協力ありがとうございました」とお話しすると、皆さん「必要性は理解しています。慣れの問題ですよ」と返してくださるんです。

これは、最初の展開のときに佐藤が、「このシステムを何のために導入するのか」という目的まで現場に伝えてくれたおかげだと思っています。

約150事業所への展開を支えた3つの工夫を示す図。工夫として「マニュアルで自己完結」「二次元コードで登録」「個別フォローも併走」の3点が挙げられ、その結果「2年目以降は『楽になった』の声が増え、現場に定着」したことが示されています。

年末調整の回収が1か月から9日へ。約13万枚のペーパーレス化を実現

導入により、どのような変化がありましたか。

佐藤さん:まず「年末調整」では、回収までの期間を約1か月から9日前後と、従来の約3分の1にまで短縮できました。

従来は、回収がすべて終わってからダブルチェックをし、システムへ登録する流れだったため、それぞれの工程で待ち時間が発生していました。

SmartHRを導入してからは、入力が終わった従業員から順にチェックを始められるため、効率が大きく上がりました。また、修正の履歴が残るようになったほか、紙や添付資料の紛失リスクがなくなり、セキュリティ面が向上しています。

佐々木さん:私自身、入社した当時は紙の多さに驚き、セキュリティ面で不安を感じていました。それが今では、入社手続きもSmartHR上で完結するのが当たり前になっています。現場の従業員の負担も、管理側の負担も、かなり減っているのではないかと思います。

さらに2026年からは、総合職向け特別徴収税額通知の配付を、SmartHRの「文書配付」機能に切り替えました。これまでは、本社が支店ごとに仕分けをして、各支店からさらに営業所へ配付していました。この手間がなくなり、本社だけでも約30時間の削減につながったと聞いています。支店・営業所での仕分けや配付まで含めると、合計では60時間ほどを削減できたのではないかと見ています。

会社全体では、2025年12月時点で電子化した書類は約13万枚にのぼります。SmartHRのアカウント登録率は93.7%、アプリインストール率は91.9%です。100%に届いていないのは、スマートフォンをもたない従業員など、SmartHRのスマホアプリを使えない従業員がいるためです。そうした方は、担当者が個別にフォローしています。

SmartHR導入後の変化を示す比較表。年末調整の回収期間が約1か月から約9日に短縮、特別徴収税額通知の配付は電子化で約60時間削減、書類の管理は約13万枚のペーパーレス化を実現したことが示されています。

SmartHRが社内通達の入り口として定着。給与明細とお知らせ機能の相乗効果

労務手続きの効率化とは別に、「お知らせ機能」も活用されていると伺いました。

佐々木さん:実は導入した当初は、「お知らせ」機能を積極的に使うつもりはありませんでした。ですが、実際に機能を試すうちにさまざまな場面で使えるとわかり、今では人事部門以外にも活用が広がっています。

佐藤さん:以前は何か社内に通達しようとすると、まずは社内ポータルに掲載したうえで、各拠点の管理者にメールを送り、展開を依頼していました。

しかし、「お知らせ」機能を使い始めてからは、こうした手順を踏まずに、従業員一人ひとりへ直接届けられるようになりました。通達を見てもらえる可能性も格段に高まり、たとえば、説明会開催のお知らせなどでも活用しています。

佐々木さん:通達を見てもらえるようになったのは、「給与明細」の配付でもSmartHRを利用していることが大きいですね。

従業員は、自分の給与明細を見るために、少なくとも毎月1回はSmartHRを開きます。こうして定期的にアプリに触れることで、お知らせにも自然と目を通してもらえるようになりました。

SmartHRが日常的に使われることで、ほかにはどのような変化が生まれていますか。

佐々木さん:SmartHRは、弊社の業務システムのなかで最も多くの従業員が使っています。その利用の広がりを活かして、今は別のシステムへデータを渡す入り口としても使い始めています。

たとえば、顔写真の登録です。別のシステムには従業員の顔写真を登録できる機能があるものの、これまでは写真がなかなか集まりませんでした。そこで、多くの従業員が日常的に開くSmartHRで顔写真を登録してもらい、そのデータを連携しようとしています。

SmartHR導入前後の「社内通達の変化」を示す図解。導入前は間接的で現場に届きにくかった通達が、導入後はSmartHRの「お知らせ」機能により、社用端末がなくても従業員一人ひとりに直接届くようになった変化を説明しています。

従業員が楽になることがゴール。SmartHRをフロントに人事DXを推進する

今後はどのような展望を描いていますか。

佐々木さん:大切なのは、システム導入そのものを目的にせず、従業員が楽に、便利になることをゴールに据える姿勢です。

たとえば、システム化せずに表計算ソフトで済む業務もあれば、いまならAIを活用したほうがよい業務もあります。だからこそ、何をどう組み合わせるのが全体として最適かを、一つひとつ見極めながら進めていきたいです。

同じような課題を抱える企業の皆さんへメッセージをお願いします。

佐々木さん一度、SmartHRでの運用が回り始めると、もう戻りたくなくなりますね。重い腰を上げるのは大変ですが、やってみたら、違う世界が見えてくると思います。

それに、SmartHRを使い始めてから、人事部のなかで「これもSmartHRでできるのではないか」という発想が自然に出てくるようになりました。マインドセットも少しずつ変わってきたなと思います。

佐藤さん:SmartHRの導入にあたっては、ただ「新しいシステムを入れます」と知らせるのではなく、「ITへの理解を深めていこう」というメッセージも同時に発信し続けてきました。

弊社は、紙による手続きが当たり前の、昔ながらの運用が残る会社でした。そんな会社でもペーパーレス化や効率化ができたのですから、ほかの会社さんもきっとできると思います。

すべての従業員が、手続きや情報を同じ「入り口」から受け取れるようになったことを、たいへんうれしく思います。引き続き、従業員目線の人事DXを支援できるよう努めてまいります。本日は貴重なお話をありがとうございました。

掲載内容は取材当時のものです。

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