人事評価にかかる時間を9割削減。学習塾の「360度評価・フィードバック」活用

課題
- 業務ツールが乱立し、「ツールカオス」の状態に陥っていた
- 従業員情報の集約がうまく進んでいなかった
- 360度評価の準備に時間がかかり、評価内容にも個人差があった
解決策
- 人事労務のツールをSmartHR労務管理に一本化
- SmartHRタレントマネジメント「人事評価」機能を利用
- 「360度評価・フィードバック」の専用テンプレートを活用
効果
- 360度評価の準備にかかる時間が9割削減され、約6時間に
- 評価の実施にあたり、用意したシートが約510枚→6枚に
- 従業員からの問い合わせもほぼなく、円滑に360評価を実施
奈良県生駒市に本社を置く株式会社ケーイーシーは、「10年・20年先も続く自信を育てる」をスローガンに活動する人材・教育企業です。小・中学生向けの学習塾「KECゼミナール」の運営を主軸とし、受験進学や学力向上のための幅広いサービスを提供しています。
同社は2023年10月からSmartHR労務管理と、SmartHRタレントマネジメントを導入して活用しています。2024年11月には、社内で実施していた360度評価(※1)をSmartHRタレントマネジメント「人事評価」機能における「360度評価・フィードバック」を使って実施。その取り組みや得られた成果などについて、同社人事部の永持さん、平本さんにお話を伺いました。
※1 上司、部下、同僚など複数人の評価者で従業員を評価する手法で、人事評価の客観性や公平性を保てるメリットをもつ(「多面評価」ともいわれる)
人事労務における「ツールカオス」の解決が喫緊の課題
SmartHRの導入前には、人事労務においてどのような課題がありましたか?
永持さん:一言でいえば、「ツールカオス」に陥っていました。人事評価はこのツールで、従業員管理はあのツールで……というように、タスクごとに実に8つのツールが乱立していたんです。
そうなると各ツールの基本的な使い方を覚えるだけでも時間がかかります。人事労務という業務の性質上、それぞれのツール内のデータを連携させるためにCSVに落としたり、スプレッドシートに集約したりといった作業も発生していました。
かなりの時間がかかってしまいそうですね。
永持さん:はい。重複入力も多く、同じ従業員の名前を一日に何度も打ち込むことも珍しくありませんでした。当時、正社員は約200名、学生講師を中心としたパート・アルバイトは1,000名規模でしたから、管理業務にかかる時間は相当なものです。
しかも、従業員も各ツールの操作にとまどうことが多く、そのたびにチャットツールで問い合わせが来て、その返信も人事部にとって大きな負担になっていました。ツールカオスの解消による人事労務の効率化は、喫緊の課題でした。

従業員情報集約をめざしてSmartHRタレントマネジメントを導入
そうした課題の解決策として、SmartHRをお選びいただきました。どのような点に魅力を感じられましたか?
永持さん:まず、カバーできる領域の広さに魅力を感じました。SmartHRは労務に特化したシステムからスタートしたサービスですから、労務周りの使い勝手が抜群によいと以前から評判を聞いていたんです。SmartHRで従業員情報を一元管理できれば、担当者と従業員ともにツールカオスから解放されると考えて、導入に踏み切りました。
平本さん:SmartHRは電子申請にも対応していますから、登録後、約1週間で保険証が届くなどのスピード感も大きなメリットですね。
また、SmartHRは今後タレントマネジメント領域にさらに注力していくという点にも注目していました。従来使っていたタレントマネジメントシステムはかなり習熟しなければ使いこなせなかったため、活用があまり進まなかったんです。

SmartHRの導入に際して、どのように社内調整しましたか?
永持さん:決裁者である社長に現状を説明し、その解決策としてSmartHRの導入が最善であると、実際の管理画面を見てもらいながら力説しました。その際、「権限設定などが柔軟にできるのはよい」と反応がありましたね。
同時に従業員情報をきちんと蓄積していけば、人材育成や組織運営にも効果的だと伝えました。本来は人事労務の効率化のためのSmartHR導入ですが、その先に「従業員データの利活用」という可能性が大きく広がっていると考えたからです。
導入前には月1回の全社会議を通じて、従業員に対しても導入メリットを数回にわたって伝えました。それまで複数あったツールがSmartHRに一本化されて業務負担が軽減するとあって、とくに反発もなくスムーズに導入できたように思います。
従業員の自己研鑽を促すために360度評価を改善・強化
貴社で実施している360度評価について教えてください。
永持さん:360度評価そのものは、SmartHR導入前の2018年から実施していました。
学習塾では知識やスキルはもちろん、人柄や人間性も大切です。そうした定性面も含めて周りから評価され、自己評価とのギャップに気づいてもらうことで従業員の成長を促したいと考えたのです。このような“フィードバック文化”を根付かせるために、主に正社員を対象にした360度評価をスタートしました。
平本さん:弊社は個人プレーよりもチームワークを重視する会社です。チーム一丸となって成果を出すにあたって、コミュニケーション能力やマナーなどをとても大切にしています。人事評価の公平性を図るためにも360度評価は必須でした。
具体的には半年に一度、講師職ではたとえばKECマインド(行動規範)に沿って「何事も自分事で考えることができているか」「良い仲間を体現するための行動ができているか」など10項目について、5点満点で自己評価してもらっています。その自己評価を踏まえたうえで、5人の同僚が被評価者を10項目、5点満点で評価して、コメントを付けるという手法です。その360度評価の結果を、1on1ミーティングでフィードバックして自己成長につなげてもらっていました。しかし、日々の業務に追われるなかで、評価する方もされる方も、どうしても評価やフィードバックがおざなりになってしまうケースが見受けられました。
SmartHRの導入後、「人事評価」機能を使ってシステマチックに行なうことで、360度評価の平準化に成功しました。しかし、当初はシート形式でお互いに評価をしていたため、秘匿性の観点から評価者と被評価者のシートを分ける必要があり、それを1枚ずつ私が作成していました。2024年5月の360度評価では約510枚のシートを作成・編集することになり、その作業にかなりの時間を要していたんです。
その作業を「360度評価・フィードバック」機能を使って効率化いただいたのですよね。
平本さん:2024年11月の360度評価では、「360度評価・フィードバック(※)」の専用のテンプレートが使えるようになったことから、以前かけていた時間の9割減の約6時間で準備が完了しました。しかも、私が実際に手を動かしたのは3時間ほどで、残りの3時間はパートさんにお願いしました。作成したシートはわずか6枚です。
※「360度・フィードバック」について詳しくはこちら
永持さん:簡単なステップで画面入力できるため、評価の際に従業員からの問い合わせもほぼありませんでした。たいへんスムーズに360度評価を実施できたと感じています。
また、2024年11月の360度評価では定量的な項目を重視したため、評価項目では採点機能のみ利用しましたが、2025年5月に予定している次回の360度評価では、コメント機能も使ってフィードバックの質をさらに強化させたいです。そのため、「従業員サーベイ」機能を使って上長とのコミュニケーションに関するヒアリングしながら、コメント付きの360度評価の実施に向けて準備を進めています。
平本さん:評価を従業員にフィードバックすることで自己成長を促すだけではなく、弊社の人材育成の理念である「信賞必罰」の根拠付けとしても役立つはずです。人事評価における公平感と、従業員のモチベーションアップに「360度評価・フィードバック」は大いに寄与してくれると思います。

従業員データを分析して、意思決定や経営判断の材料に
最後に今後のSmartHR活用の展望についてお聞かせください。
平本さん:現在、SmartHRを主に活用しているのは人事部ですが、適切な権限設定のもと、ほかの部署でも活用できるようにしたいと考えています。従業員データをもとに「どうすれば教室運営をさらによくできるか」を自分たちでも考え、改善していく仕組みができあがると理想的ですね。
永持さん:SmartHRの活用で捻出した時間を使って人事制度の改正を進め、働きやすさとコストパフォーマンスを最大化する職場環境を整備していきます。
従業員情報を「集める」「貯める」「活用する」の3段階で考えたとき、弊社は「集める」「貯める」に注力しているところです。今後は情報集約の精度を高め、1年以内にたとえば「こんな人材がいるんですが、教室長にどうでしょう?」など、従業員データをもとにした人事部からの発信や提案を増やして、活用フェーズに進めたいです。
経営陣や管理職も必要に応じて従業員データをすぐに確認できる体制を整えるなどして、より重要な経営判断にも活用していきたい。SmartHRを今後もさらに活用してまいります。
まさに「学習塾の人的資本経営」ともいえる活用です。さらに設定作業を効率化する仕組みやIF関数の実装をはじめ、よりご利用いただきやすい機能アップデートをめざしていきます。本日はありがとうございました。
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掲載内容は取材当時のものです。