人材情報の一元化と生産性向上を両立。全社横断のペーパーレス化で印刷作業が10分の1以下に

課題
- 人材情報の一元化や認証基盤への活用のため、効率的な共通ID発行が求められた
- 人事DXとして、従業員と管理部門の双方にとってメリットある形を模索していた
解決策
- 採番アプリの導入によりグループ会社を横断した共通IDを作成
- SmartHRの導入により給与明細や入社手続き、年末調整などをペーパーレス化
効果
- 入社時に共通IDの発行が可能。IDの二重発行や管理工数が削減された
- 給与明細や年末調整に伴う印刷作業がSmartHR導入前の10分の1以下に
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社は、関西エリアを中心に、百貨店、食品スーパー、商業施設、専門店やコンビニエンスストアなどの小売事業を展開する生活総合産業グループです。
同社は2022年にSmartHRを導入し、グループ会社を横断した従業員の共通IDの発行にはじまり、段階的な人事業務のデジタル化・ペーパーレス化を実現してきました。年末調整など一部のグループ会社で試験的に運用していた機能も現在、利用範囲を拡大中です。
こうした取り組みの背景や効果について、IT・デジタル推進室 会計・人事システム企画開発推進部 部長の堀内さん、同部の筒水さん、壬生さんにお話を伺いました。
人材情報の一元管理と並行して、従業員の効果実感を目指す
SmartHR導入の背景について教えてください。
堀内さん: まず背景として大きいのが、当社が2021年に発表した「中期経営計画 2021-2023年度」です。そのなかで、グループ全体でのIT・デジタル化を実現すべく、積極的なIT投資をするという方向性が示されました。

堀内さん:そこで人事システム領域では、グループ会社ごとに管理されている人材情報を一元管理できる従業員データベースを作成したいと考えました。ただし、人事部門やマネジメント側でメリットを感じられたとしても、従業員にとっても恩恵が感じられるものでなければ、デジタル化推進に対する理解は得られません。
そのため、人材情報の一元化と並行して、従業員にとっても効果をすぐに実感できるクイックウィンの施策もあわせて検討する必要がありました。
決め手は、従業員共通IDの付与とクイックウィンの実現
人事情報の一元管理が必要だった背景は何ですか?
堀内さん:大きく2つの理由があります。1つはこれからの成長を考えたとき、人材の流動化を視野にグループ会社をまたがった異動がさらに促進されると予測したためです。当グループでは、従業員情報の管理はそれぞれのグループ会社が独自で担っているケースがほとんどでした。
今後のグループの成長において、グループ内の人材の可視化や最適配置へのニーズがますます高まると考えます。そうした状況に対応するためにも、従業員情報の一元化を進める必要性がありました。
また2つ目の理由として、グループ会社を横断した全社的なDXを進めるなかで認証基盤としての共通IDが必要になったことが背景にあげられます。以前は認証をするために、会社コードと従業員コードの2つを組み合わせる必要がありました。
そうしたなか、SmartHRを導入した決め手は何だったのでしょうか?
堀内さん:導入の決め手も2つあります。1つ目はSmartHRと連携した「社員番号採番」によって、入社手続き時に従業員に共通IDを付与でき、人材管理業務の効率化が見込めます。
2つ目は、給与明細等のペーパーレス化によって、従業員が導入後すぐにメリットを感じてもらえることです。まさにクイックウィンを実現できると感じました。
これらが決め手になり、SmartHRの導入を決めました。

共通IDの採番とペーパーレス化により生産性が向上
「採番アプリ」によって共通IDの付与後、どのような変化がありましたか?
堀内さん:導入以前は、人事情報は給与計算システム側で管理していました。当時、従業員のIDを給与計算システムから採番をしていました。ただし、グループ会社ごとに採番ルールが異なるケースもあったのです。そのため、グループを横断しての従業員情報の管理や施策活用の際は、新たにグループ共通IDを採番し、リストの最適化作業が必要でした。
こうした状況も採番アプリの導入後は解消され、入社手続きの段階でグループ共通IDをSmartHR上で管理できるようになりました。
従業員側にはどのような変化がありましたか?
筒水さん:グループ会社の現場では、給与担当者の工数が大幅に削減しました。以前は紙の給与明細を各拠点に発送して、現場にて従業員に配布するまでに大きな苦労がありました。非正規雇用のスタッフは出勤日に渡せるよう手配する必要がありますし、退職された方・海外に駐在されている方・長期で休まれている方には郵送もしなければいけません。
それがSmartHRの導入後は、給料明細、賞与明細、源泉徴収票のすべてが電子化され、印刷作業の削減により生産性向上につながっています。

印刷作業が10分の1以下に。従業員&経営層からも好反応
人事部門としては、どのような成果を実感されていますか?
筒水さん:当社はグループの労務管理に関しても、給料計算や入社・退社の手続きをグループのシェアードサービスの会社が統一で管理しています。そこでSmartHR導入前の状況を確認したところ、以前は給料明細の発行や各事業会社・各拠点の、仕分け・発送業務などに多くの工数をかけていたとのことでした。
百貨店事業における給与明細の印刷作業だけでも、毎月の印刷数が数千枚から数百枚に減少しています。そのほかのグループ会社についても、同じく数千枚から数百枚にまで印刷数が減りました。
年末調整における印刷作業についても、百貨店事業で数千枚だったものが数百枚に、そのほかのグループ会社で万単位だったものが半分以下にまで削減されています。また、印刷業務から配付仕分けまで1日がかりだったのが、導入後は半日以下で完了できるようになったことも大きな成果です。
壬生さん:従業員としても年末調整の回答のしやすさに驚いています。アンケート方式で質問に答えるだけで入力できる点がわかりやすいと感じます。
元々年末調整は、記入方法がわかりづらいという印象がありました。SmartHRであればマニュアルが事前に整備されているうえに、操作が簡単。年末調整もクイックウィンには欠かせない機能だと実感しました。

組織全体からみて、DX推進、クイックウィンの実現を振り返ってみていかがでしょうか?
堀内さん:「中期経営計画 2021-2023年度」にもとづく積極的なIT投資があったなか、人事領域のデジタル化は、さきほど述べたような大幅なペーパーレスによる定量的な効果や、業務効率化という成果が出ており、従業員もその恩恵を受け取り大きなメリットを実感しています。
その意味では、経営層を含めてグループ内でもデジタル化によって成果が上がった領域の1つとして社内で認知される結果になったと思います。
業務効率化をさらに進め、上流の仕事へシフト
SmartHRの活用を含めた今後の展望をお聞かせください。
堀内さん:さらなる効率化、生産性向上を図っていきたいですね。とくにシェアードサービスの会社や各グループ会社の間接部門は少人数であっても運営できるような体制にしていきたいです。一方で、コンプライアンス面や多様な働き方の推進、人事制度の見直しなど管理工数は年々増えていく傾向にあります。それらに対応しながらも、より上流の仕事にシフトできるよう時間をつくっていきたいですね。
筒水さん:マイナンバーの収集もSmartHRを活用できないかと考えています。従業員にとっての利便性と、収集・管理の負荷軽減を両立し、より安全な収集が実現できるのではないかと考えています。
壬生さん:SmartHRにはさまざまな機能がありますよね。電子申請やタレントマネジメント領域等、様々な機能について情報収集し、活用の可能性を検討してみたいと思っています。
SmartHRは機能追加や改善のペースが速いので、そのあたりもキャッチアップしながら今後も積極的な活用を続けていきたいと考えています。
給与明細や年末調整で、DX推進におけるクイックウィンを体現されていますね。今後も人事評価をはじめ、タレントマネジメント領域への取り組みも引き続きサポートさせていただきます。本日は貴重なお話、ありがとうございました!
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掲載内容は取材当時のものです。