年247万円のコスト削減と分断した従業員情報を一元化。“戦略人事”へ踏み出した三栄会の取り組み
| 社名 | 社会医療法人三栄会 |
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課題
- 紙・表計算ソフトでの申請が煩雑。人事・職員双方に負担があった
- 従業員情報の管理が分散。二重登録や人為的ミスが課題
- 人事考課時に、分散した従業員情報の抽出・作成が必要だった
解決策
- 人事データをSmartHRに集約
- 必要な情報を最適な形式で抽出・分析できる体制を構築
効果
- 年間約247万円規模の工数を削減
- 人事課が戦略人事について「考える時間」を確保できるようになった
- SmartHR中心の業務改善とタレントマネジメントの機運が高まった
社会医療法人三栄会は、兵庫県姫路市のツカザキ病院を中核に、複数の医療機関を運営しています。地域医療を支える役割を拡大し、病床数や職員数が年々増加。採用活動や入退職、各種申請に伴う業務に追われ、人事部門の工数は限界に近づいていました。
その課題を解決するため、2024年にSmartHRを導入。「年間247万円」に相当する定型業務の工数削減を実現しました。そして現在では、効率化により捻出した時間を定着・育成・配置といった戦略人事へ振り向ける展望を描いています。
法人本部人事課 課長の長谷川さん、主任の鳴瀬さん、企画課 主任の木村さんに、課題を解決するまでの道筋と、今後予定する取り組みについて、お話を伺いました。
組織拡大で、紙と表計算ソフト中心の運用が限界に
SmartHRの導入以前、どのような課題がありましたか?
鳴瀬さん: 人事課では、多くの業務が紙と表計算ソフト中心で、人事評価や勤怠、給与などはそれぞれシステムを使い分けている状態でした。
職員数が年々増えるなか、「紙による申請の煩雑さ」と「データの分断」が課題となり、それに起因して対応工数も増加の一途をたどっていました。
職員数が年々増加している背景を教えてください。
長谷川さん: 兵庫県の、とくに姫路市の西側(岡山県寄り)は、救急医療を担える病院が少なく、“医療過疎”と呼ばれるような地域でした。そうしたなか、周辺の病院の統合・合併などもあり、当法人に期待される医療の役割がさらに大きくなっていました。
病床数は病院の判断だけで増やせるものではなく、行政の許可を得ながら段階的に増床していきます。それに伴い必要な人員配置を満たすため、毎年の新卒採用に加えて中途採用も積極的に進めてきました。また、診療科や設備の拡充が進み、若手の医師が「症例を経験したい」と集まる土壌になったことも、職員数の増加につながりました。
鳴瀬さん: 組織が大きくなれば当然、入退職や身上変更(結婚・住所変更など)といった手続きも増えていきます。その一方で、医療機関は診療報酬制度で成り立っているため、人事労務のような間接部門は、単純に人を増やせません。限られた人数で、いかに業務を効率よく回すかが課題でした。

「紙による申請の煩雑さ」は、具体的にどの業務で感じていましたか?
鳴瀬さん: 現場と人事課で、それぞれに負担が発生していました。一例としては「入職手続き」です。当時は入職時に提出してもらう書類が8枚ほどあり、入職手続きをする日には、新入職員への書類の説明と記入だけで数時間を要していました。
なかには保証人の署名が必要な書類もあります。ご家族が遠方の方だと郵送でやり取りして、返ってくるのを待たねばならず、人事課側も待ち時間が発生していました。
ほかにも、「住所変更」などの申請は、忙しい現場の合間を縫って人事課まで確認や提出に出向いてもらう必要があり、私たちもその都度、説明や対応をしなければなりませんでした。これは、現場の職員にとっても人事課の担当者にとっても、負担が大きかったです。

データの分断により、同じ情報を二重三重に登録していた
情報が一元化されておらず、散らばっていたことにより、具体的にどのような問題が起きていましたか?
鳴瀬さん: 同じ情報を、何度も別々の場所に入力しなければなりませんでした。たとえば、新しく入職した人がいる場合、履歴書の情報を職員名簿に入力し、そのほか給与システムや勤怠システムにも登録する形で、1つの情報に対して複数人の手間が発生する状態になっていました。これでは非効率ですし、転記する回数が増える分、ヒューマンエラーのリスクも高まってしまいます。
木村さん: SEの立場からシステム的に見ても、マスターデータが各所に散らばっており、「こんなにデータが点在していたのか」と驚きました。

SmartHRで人事・労務の基盤を整え、タレントマネジメントへの発展を選択
人事評価は別のシステムをご利用だったと伺いました。今回、SmartHRを労務だけでなく、人事評価まで含めて導入したのはなぜですか?
鳴瀬さん: 今回の導入にあたっては、「既存の人事評価システムをベースに労務をシステム化する」「人事評価のみ既存システムを残す」など、いくつかの方法を検討しました。そのなかで、SmartHRの「人事評価」を導入した決め手の1つは、「汎用性」です。
長谷川さん: 既存の人事評価システムは、汎用的なデータベースとしては使いにくかったという課題がありました。
背景としては、当時、「人事評価の電子化」を優先していました。それ以前は紙で運用しており、評価結果の原本は人事課で保管されていて、本人にフィードバックされていない状態でした。そうした「評価の不透明さ」の解消を目的に、「まず、電子化する」に重きを置いたのです。おかげで、人事評価については、紙の運用から脱却しました。
ただ、データベースには「評価に関わる項目」しか入れておらず、また、そもそも評価対象外であるパート・アルバイトの人たちのデータは収集していませんでした。
そのため、人事考課の検討会議などで「職員の評価以外の情報を見たい」となると、いったん人事部門へ問い合わせが来て、都度データを探して資料を作り、共有する流れでした。人事考課の時期は、会議のたびに情報を取りまとめる必要があり、作業負荷も大きかったです。
そこで、SmartHRで労務業務を効率化するとともに、人事データの基盤を整えて、課題だった「人事情報の散らばり」を解消する。そして、パート・アルバイトの人たちを含む人事データが集約されたSmartHRで人事評価や資格管理を進めれば、シームレスなタレントマネジメントを実現できると考えました。
鳴瀬さん: 個人的にはデータベースの項目や、分析の際の抽出条件など、自分たちで自由に設定できる「運用の柔軟性」も、導入の決め手です。
「どのような分析をしたいか」によって「どのような情報を収集すべきか」は変わります。何を、どのように分析して戦略人事を組み立てていくのか。私たちもまだ正解を持っているわけではありません。その点で、SmartHRにデータが一元管理されているからこそ、都度参照したい項目をピックアップし、すぐに最新の項目にアクセスできるので、運用の試行錯誤のしやすさは嬉しいポイントです。
木村さん: 私は院内SEとして、さまざまな事業者さんとプロジェクトを進める機会があります。システムなどを新規導入する際、進め方によってはこちらの負荷が跳ね上がってしまうこともあります。
その点で、SmartHR導入の際には手厚く導入フォローしていただくことができました。私が手を動かしたのはマスターデータをまとめ上げるところが中心で、そこ以外はかなり助けていただいた印象です。

月90件の申請をペーパーレスで完結。定型業務を軽くし“考える時間”を生む
労務業務について、SmartHRの導入で、どのような効果がありましたか?
鳴瀬さん: 住所変更や身上変更など、平均して月に90件ほどの申請がありますが、これらをすべてペーパーレスで完結できるようになりました。
紙から切り替えた当初こそ、「どうやればいいのか」という問い合わせが増えた時期もありましたが、今では「人事に問い合わせなくても各部署で不明点を解決できる」「職員が自宅からでも問題なく申請できる」状態にできています。
数値として効果測定できる範囲では、以下のような削減効果が見えています。
- 医師への給与明細の配布:月15時間、年間約36万円の削減
- 特別徴収の配付:年25時間、約5万円の削減
- 給与明細の配付:旧システムの有料オプションから移行、年間約126万円の削減
- ストレスチェック:紙運用から切り替え、年間約66万円の削減
- 健診結果配付:年70時間、約14万円の削減見込み
合計すると、年間で約247万円分の工数を削減できる見込みです。
長谷川さん: 管理職側の承認プロセスも効率化されました。以前は、部署長 → 部長 → 人事課の流れで1枚の紙が回っていたため、「今どこまで申請が進んでいるのか」が分かりませんでした。申請書の紙が行方不明のようになって、あちこち聞いて回るようなこともありました。
SmartHRでは、承認者宛にメールで通知が届きます。私も出張先などからスマートフォンで確認して「タスクが溜まっている」と思ったら出先でも承認対応できます。申請した側も「課長の承認がないと次のステップへ進めない」という待ち時間が減りました。
「自己申告が必要な情報」を効率的に収集し、人事データベースの精度も向上。
タレントマネジメント領域では、「スキル・資格・研修」の機能もご活用いただいていると伺いました。
長谷川さん: 医療機関において、資格や研修履歴は、単に「もっていると手当が付く」に留まりません。病院の機能によっては、「この講習を受けた人が何人必要」「認定資格をもつ人が何人必要」といった、人員配置の要件に関わることもあります。いわば、病院として果たすべき役割や運営の前提に直結する情報です。
難しいのは、情報が点在しやすいことです。以前は、職員が所属する部門ごとに独自で情報を管理していたため、報酬を算定する際に「Aさん、Bさん、Cさんが登録されているから大丈夫と思っていたら、実はCさんは去年退職していた」といったズレが起こることもありました。
リアルタイムに正確な情報を把握するためには、人事部門から定期的に呼びかけるだけでは不足があります。「更新があった都度、本人から自己申告してもらう」ことが必要です。
たとえば「看護補助者(ケアワーカー)」では、国家資格に合格すると給与が上がるケースがあります。免許証の写しを提出してもらって初めて処遇に反映できますので、取得したタイミングでなるべく早く申請してもらう必要があります。
SmartHRであれば、業務でPCを利用しない職員でも自身のスマートフォンアプリから申請が可能ですし、「スキル・資格・研修」の機能で人事側が一元的に職員の保有スキルや経験を管理できるので、たいへん便利だと感じています。
総じて、SmartHRの導入により、法人内に点在していた人事情報が一元化できただけでなく、従来は収集できていなかった保有資格などの情報も加えられたことで、データベースとしての精度は向上していると思います。人事課が、今後「戦略人事」へと軸足を移すための、しっかりとした土台ができてきました。

導入の苦労を超えた先に、組織に芽生えた「変革への意識」
長谷川さん: ただ、正直に言えば、導入時はかなり苦労もありました。年度の切り替わるタイミングでしたので、SmartHRの導入を進めながらも現状の紙運用が残っている状況で、100人規模の入退職の処理も並行していました。
鳴瀬を中心にそれぞれの担当が奮起してくれ、「この期間にここまで仕上げる」と役割分担を明確にしつつ、周囲のフォローもありながら何とか乗り切りました。
ただ、その苦労の結果として、組織内に少しずつ変化が生まれてきていると感じています。
鳴瀬さん: 職員からの反応としてはスマホアプリから「いつでも申請できる」「スマホでできるのがいい」という声ですね。
また上層部からも、時間外申請や有給休暇など紙運用が残っている部分に対して「紙のままでは遅いのではないか。ペーパーレス化しよう」という声が出るようになりました。SmartHR導入による効果を、上層部にも実感していただけているのだと思います。
長谷川さん: 当初は、人事部門を中心にSmartHRを活用する意識でいたのですが、他部門からも「これもSmartHRでできないか?」という声が届いています。
具体的には、院内への情報共有です。職員は全員がPCを利用するわけではないため、以前は文書ファイルを「掲示板」的に使い、イントラネットへアップ、各部署が毎朝チェックし、朝礼でアナウンスしていました。
SmartHRなら、職員一人ひとりへ直接情報を届けられます。医療機関では「回答率を100%にしなければならない」と法令で定められた周知事項などがあり、その場合は「従業員サーベイ」を使っています。回答率の進捗や、未回答者の抽出などを効率よく管理できて助かっています。
効率化で生み出した時間を「戦略人事」へ。次世代人材の定着と育成へ向けた取り組み
今回の取り組みにより創出した時間を、どのように活用される予定ですか?
鳴瀬さん: 戦略人事を実現するために、まず「どう分析したいのか」があって、そのために「どういうデータが貯まっていればいいのか」を設計する。今回の取り組みでようやく、その試行錯誤のための時間を創出できました。
基本的には、SmartHRをデータベースとして、そこから、たとえば給与計算や勤怠なども、できる限り連携させたいと思っています。医療業界ならではの事情や、各部門との調整も行ないつつ、より良い形をつくり上げていきたいです。
木村さん: 医療システムなどは、現状ではまだ、マスターの登録や改廃を手作業が必要な部分があります。そうした部分まで含めて、SmartHRのデータベースに貯まった情報を活用して効率化を図りつつ、将来的にはRPAによる自動化なども検討していきたいです。
長谷川さん: 他の業界と同様、医療においても人材の確保は喫緊の課題です。新規採用はもちろん、定着率をどう上げるか、教育や福利厚生の見直し、中堅以上の職員に向けた研修などへ、人事部門のリソースをかけていきたいです。
医療業界はスペシャリスト志向の方も多いです。マネジメントを担うジェネラリストだけでなく、専門性を発揮できる人たちがどう評価され、どう活躍できるか。評価制度や処遇のあり方も含めて見直していきたいですね。
また、業界全体として「世代交代」も進んでいます。現場任せではなく、人事課が主体となって、人員配置や異動も含めて提案できる組織にしていきたいですね。
具体的な労務業務効率化によるコスト削減とタレントマネジメントの土台づくり。非常に参考になるお話ばかりでした。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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掲載内容は取材当時のものです。
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